進化するSmartHRのミッション

──宮田さんは、自身が退任するべきだといつ頃から思うようになりましたか。

宮田氏:それはよく聞かれるのですが、特にいつというのはありません。ふと思う、というような感じです。僕は毎朝、1時間お風呂に入り、1時間散歩しているのですが、そのときに会社の将来のイメージトレーニングをしたり、過去を振り返って内省したりしています。

それを続けていく中で、昔であれば「あれは良かった」と思うこともあったのですが、近頃はそれがどんどん減っていることに気づきました。特に「何ができなかった」というよりかは、日々の内省の時間において、「最近はあまり何もやれていないな」ということを、ふとした瞬間に感じることが増えました。

──会社が急成長している中での退任となりましたが。

宮田:SmartHRでは次のミッションを「社会のインフラになる」といった内容にしようと思っています。

今のミッションは「社会の非合理を、ハックする」。これはSmartHRとしては2代目のミッションで、1代目は「テクノロジーと創意工夫で社会構造をハックする」。初代のミッションは2015〜2018年の3年間使いました。2代目のミッションは2018年の夏頃に作ったので、もう3年半くらい経っています。

SmartHRは2021年、ユニコーン企業になりました。2020年までは「ユニコーン企業になるぞ」という目標を掲げて社員を束ねていたのですが、2020年以降は「来年にはユニコーン企業になるのではないか」という話が社内で出始めました。

その際に「目標迷子になるのではないか」という話が出てきました。そこで次の目標を考えた時に、「社会のインフラになる」という内容がしっくりくるのではないか、ということになりました。そうなると「会社のスタンスが変わる」と思ったのですよね。

「社会の非合理をハックする」というのは、何かの課題に対して楯つく、という意味だと思います。一方で「社会インフラ」には、提供者側のイメージがあります。

僕はパーソナリティ的に、何かに楯ついている方が楽しい、逆側はちょっと違うな、と思っているタイプです。

──共同CEO体制という案もあった中で、芹澤さんがCEOとなった経緯は。

芹澤:取締役会に倉橋・芹澤の共同代表制という案を持っていったら、「共同代表はありえない」、「株主からするとベストな回答だとは思わない」といった具合に猛反対されました。「1人を選ぶことから逃げているのではないか」とも言われて、その言葉を聞いたら「そうかもしれない」と思うようになりました。