CEOを退任しようかどうか悩んでいるときは、先輩を含む、周りの経営者たちにも相談をしました。そこで気づいたのは、CEOのポジションを引き継ぐことができるような会社は意外と少ないということです。ただ、SmartHRでは、例えばこの1年間、僕がいなかったとしても会社は回っていたと思います。そんな組織を作れたのは僕の功績だと思っていますし、離れるという選択がしやすかったのです。

芹澤:確かに、宮田さんが育ててきた組織やカルチャーを引き継ぐのであって、タスクを引き継ぐというかたちではありませんでした。

「労務を効率化する会社」から「組織の生産性を高める会社」へ

──今後、SmartHRをどのように成長させていきますか。

芹澤:SmartHRは人事・労務業務を効率化し、いわゆるDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるためのツールとして開発され、普及してきました。ですが、ここ1年は業務の効率化だけでなく、社内における従業員のエンゲージメントを高め、組織の生産性を高めることも目指してきました。この部分に関してはまだまだ伸び代があるため、2022年以降も伸ばしていきたいと考えています。

SmartHRは人事・労務業務を効率化する会社だと認知されていますが、そうではなく、組織の生産性を高める会社というイメージに変えていきたいと思っています。

──どのようなイグジット戦略を描いていますか。

宮田:実はSmartHRはイグジットに焦らなくても良い会社なんです。株主の多くは2015〜2016年にファンドを組成しています。一般的にファンドの満期は10年と言われているので、まだまだ(時間的に)余裕がある。「ファンドの満期が長い」ということは、ベンチャーキャピタル(VC)を選ぶ際に重視する1つの要素でもあります。シリーズEやFラウンドの資金調達をした方が良いとなれば、その選択をする可能性もあります。 

芹澤:取締役会においても、「(どうイグジットするのかではなく、)どう事業を伸ばしていくのか」という議論が中心になっています。

──宮田さんは今後、SaaS・FinTech領域の新規事業を立ち上げる予定だと発表しています。

宮田:退任が決まった時は次に何をするかは決まっていませんでした。社内の新規事業のメンタリングに時間を使うのか、それともM&Aのソーシングをするのか、など考えている中、新規事業のアイデアを思いつきました。それはスタートアップ業界を良くできるような事業で、SmartHRくらいの規模に成長させられるポテンシャルがある事業だと考えています。