今では医学生の7〜8割が登録するというHOKUTO resident。特にコロナ禍では、病院の合同説明会イベントが開催できなくなったこともあり、サービスシェアが急増しているという。

ただ、病院の研修医獲得のための予算はそれほど潤沢ではない。医学生をターゲットとしている限り、広告媒体としての価値もさほど高まらない。そこで五十嵐氏は、「医学生が医師になっても使われるようなサービスにすることで、収益性が上げられるのではないか」と考えた。

HOKUTO resident立ち上げのために情報収集をした各地の医学生が、卒業して医師となったタイミングで、五十嵐氏はもう一度彼らに会いに行く。そこで新たに見つけた課題が「医学情報の更新ペースの早さ」「一般の検索エンジンによる医学情報の検索精度の低さ」だった。

医師も「ググる」最新医学情報をより探しやすく参照しやすく

冒頭で述べたように、医師は数多くの多様な論文や医学ニュースなどの中から、自分の診療科や専門に関係する最新の医療情報を取捨選択し、キャッチアップして内容を覚え、ノートに記録するなどして現場ですぐに生かせるようにしておかなければならない。

昔の医師は、臨床現場で何か分からないことがあれば医学書で調べて、それをもとに治療を施していた。しかし情報更新ペースがあまりにも早いため、たとえば新型コロナウイルス感染症でも、2年前の治療法と今の治療法では全く違うということが起きてしまう。だから医学書では情報更新が追いつかない。

では、どのように医師が治療方法を調べているのか。五十嵐氏はヒアリングの中で、医師たちがGoogle検索を使っていることに気づいた。ただ、Google検索はもちろん、医療に特化したサービスではないため、より検索数が多い患者向けの情報が上位に表示され、医師が本当に欲しい情報は検索結果の奥底に眠っている。このため治療方法を調べる行為にとても時間が掛かり、医師や医療現場の効率性が下がる結果となっている。

そこで「医師向けに医療情報専用の検索エンジンをつくれば大きなペインを解決でき、医師が一生涯にわたって使い続けるサービスになるのでは」と開発されたのが、医師向け臨床支援アプリのHOKUTOだ。

HOKUTOは、アプリ内で論文や医学ニュースなどの最新情報の入手、医学知識の保存、文献検索がワンストップで可能だ。

HOKUTOでは、各位学会の診療ガイドラインや薬剤情報、専門医監修の診療マニュアル、医学・生物学文献データベースのPubMedのほか、医学論文からの引用に基づき作成した医療計算ツールや抗菌薬の腎機能投与量計算機能にアプリから簡単にアクセスでき、無料で使用できる。また、医学出版大手のウォルターズ・クルワー・ヘルスが提供する臨床意思決定支援リソース「UpToDate」の購読契約がユーザー側にあれば、その記事の閲覧もアプリ内でできる。