海外に目を向ければ、米国で医師・医療従事者専用のプラットフォームとして医療ニュースや遠隔医療ツールなどを提供し、「医師版LinkedIn」とも呼ばれるDoximity(ドクシミティー)が2021年6月にニューヨーク証券取引所に上場している。同社の2021年3月期の売上高は2億ドル(230億円)余り、対象マーケットは18億ドル(約2兆円)規模と推定されており、「米国でも市場規模が大きくなっている領域」(五十嵐氏)だという。

米国に限らず、東南アジアやインド、中国などのアジア圏でも、医師向けのスマートフォンアプリは提供されているが、「MRの人件費が米国と日本では高いため、その置き換えとしての市場が大きい。また中国では遠隔オンライン診療などに多角化する傾向があり、製薬企業のデジタル広告の分野では日本と米国のマーケットが特に大きいのです」と五十嵐氏は説明する。

HOKUTOは2021年12月に、総額8億2500万円の資金調達を実施している。今回の第三者割当増資の引受先は、グローバル・ブレイン8号投資事業有限責任組合、Genesia Venture Fund 2号投資事業有限責任組合、GMO GFF投資事業有限責任組合 無限責任組合員、グリーベンチャーズ1号投資事業有限責任組合と個⼈投資家等の株主。今回の資金調達により、HOKUTOの累計調達額は11億2500万円となった。

冒頭でも触れたが、HOKUTOに投資する個人投資家には、名だたる起業家・投資家が名を連ねる。また、実際にサービスを使う医師らからも出資があるという。

HOKUTOに投資する個人投資家

投資家らのコメントによると、「課題や事業成長のマイルストーンへの解像度の高さ」「実行力や巻き込み力」などのほか、市場規模が大きく成長率が高い医療領域での事業展開や、実際に医師や医学生に使われるプロダクトがすでに提供されている点などが評価された結果、出資が行われているようだ。

「これまでは調達情報は公開せず、ステルスでサービスを展開し、ユーザーだけに向き合ってきました。ですが製薬企業との取引が拡大し、採用面も強化するタイミング。今後は2〜3年でエムスリーやメドピアに並ぶ会員規模に成長し、さらに数年で国内30万人の医師にリーチする規模を目指します」(五十嵐氏)

また、国内に次いで、海外への事業展開も視野に入れていると五十嵐氏はいう。

「中国や東南アジアの病院にも行脚し、米国のユーザーにもヒアリングをしましたが、実はどの国でも、まだそれほど同種の医療情報提供アプリは使われていないと分かりました。米国はマーケットも大きく、大きなプラットフォームが2つしかないので、そこでも市場シェアをしっかり取っていきたいと考えています。最終的には世界中の医師が我々のプラットフォームを使い、世界中の医療情報がどんどん蓄積していって、HOKUTOさえあれば世界中どこに居ても情報を得られる状況にするというのが、私がこの会社で実現したい世界観です」(五十嵐氏)