同じように今後15年以内に、SNSのアカウントを開設するような手軽な感覚で、自分だけの3次元世界を創り出せるようになるでしょう。オリジナルな3次元空間と自分のアバターを、個々人が当たり前のようにもつ時代がやってくるのです。映画『竜とそばかすの姫』(細田守監督による仮想世界を舞台にした長編アニメーション)的な未来は、もうすぐ手が届くところまで迫っています。

膨大な並行世界がパラレルワールドとして溢れ、相互に影響を与え合っていく。世界Aから世界Bに瞬間移動したり、世界Aと世界Bがコラボレーションして面白いイベントを企画する。複雑系のさらに先の先を行き、多元的な並行世界が理解不能なレベルまで永遠に進化していきます。

『竜とそばかすの姫』では、悪さをする竜に対して「あいつをみんなでやっつけようぜ」と申し合わせてガーディアン(自警団)が一斉に叩きます。Twitterでも見られるようなコミュニケーションが2次元から3次元に進化し、信じられないほど複雑さを極めるのです。

仕事でストレスが溜まったとき、サブ垢(匿名の別アカウント)にログインして、誰かを誹謗中傷したり攻撃したりする人がいます。そういう人はアカウントを5個も10個ももち、アイデンティティを器用に使い分けています。

戦闘モードのアバター(人格)もあれば、現実世界から疲れたときにまったりと休むアバターもある。人々の精神構造は今よりも複雑に細分化し、それぞれのメンタリティがメタバース上に無数に展開されるようになるでしょう。

複数の仮想世界で生きていくのが当たり前になったとき、人間のアイデンティティや精神は変容し、現代人の感覚とは全く別ものになっていくはずです。

人々がスマホでTwitterやInstagram、TikTokを使いこなすようになってから、現実世界がもつ価値は相対的に下がりました。リアルに喫茶店でコーヒーを飲んだり、レストランで食事したりする相手はガクンと減り、そのかわり何千人・何万人というフォロワーとの交流が活発化します。

夫婦や友達連れで一緒に食事に来ているのに、目の前にいる人とは全く会話せず、目すら合わせずスマホの画面に見入っている人も珍しくありません。近所のコンビニにはスッピンで行くのにインスタの前では化粧をする人もいます。

メタバースによって3次元の仮想空間ができ上がれば、最終的に現実世界の価値は今の 10分の1くらいに下がると私は見ています。