「当時、ByteDanceがテレビCMやネット広告などTikTokのマーケティングに予算を投じていくフェーズだと聞いていたんです。彼女に毎日動画を投稿をさせれば、プラットフォームの成長とともに入ってくる新規ユーザーがファーストインプレッションで彼女の動画を見て、頭に残るのではないかと思いました。なるべく言葉を使わず、日本語が理解できなくても分かるコンテンツをつくるようにプロデュースしていきました」(鈴木氏)

景井さん自身も海外で流行っている動画コンテンツのフォーマットを勉強し、試行錯誤を繰り返しながら毎日投稿を続けた結果、現在の人気に繋がっていったという。他にも、TikTokでの“人気者”が多数所属しているホリプロデジタルエンターテインメント。スカウトするにあたり、鈴木氏は「執着心を意識している」と語る。

「スカウトするのは、ひとつのことに対して異常な執着心がある人です。逆に執着心がない人は、どれだけフォロワー数がいてもスカウトしないようにしています。結果的に執着心がある人はコンセプトが明確にあり、どのペルソナに何の情報を提供するかが定まっているのでTikTokでの人気も出やすい。マスを狙うのではなくニッチを突き詰めることで差別化にも繋がっていきます」(鈴木氏)

YOASOBI、景井ひなの仕掛け人たちが語った「プロデュース論」、SNS時代のヒットをどう創るか?
 

例えば、ブレイクダンスを中心としたさまざまなジャンルのダンス動画を投稿している七瀬恋彩さんは「かわいすぎる女子高生×ブレイクダンス」を切り口に、ひたすら動画投稿をし続けた結果、半年ほどで100万フォロワーまで成長したという。

時代とともに変わりゆくプロデューサーの役割

ヒットを創り出すための場所がテレビからSNSに変わっていることで、「プロデューサーに求められる役割も変わってきている」と佐藤氏は話す。

「テレビが主流の時代はテレビ番組へのキャスティングが役割でしたが、SNSが主流の時代は違います。タレント本人がファン(フォロワー)のことを誰よりも理解していて、自分たちでコンテンツも投稿できるので、タレント本人のスキルが圧倒的に重要になる。そのスキルを発揮できるようにサポートするのがSNS時代のプロデューサーの役割なのかなと思います」(佐藤氏)

例えば、YOASOBIに関してもayaseさんとikuraさんのぞれぞれが持っている強みを発揮できるような環境をつくっているという。「やりたくないことはやらずにいられるのが一番いい。その部分をプロデュース側が担うといった工夫はやっています」と屋代氏は語る。