また、エンターテインメント業界はK-POP、韓国ドラマなど、いわゆる「Kコンテンツ」で話題が持ちきりだ。日本のコンテンツのグローバル化については、どう考えているのか。YOASOBIは2021年7月にデビュー曲「夜に駆ける」の英語版「Into The Night」を配信リリースするなど、英語版の楽曲の展開もおこなっている。

「もともとikuraが0歳から3歳までシカゴに住んでおり、喋れはしないものの英語の発音が良かったので、『英語にチャレンジしてもいいかもね』という話の中でプロジェクトがスタートしました。英語版の楽曲は海外でたくさん聞いてもらおうと思っておらず、あくまで興味を持ってもらう窓口としての役割を期待して始めたものです」

「実際、海外で興味を持ってくれる人は増えました。変にローカライズをすることなく、自分たちがつくった楽曲をより多くの人に広げてもらう窓口、切り口をたくさんつくる、という考え方のもと、英語版の楽曲は展開しています。K-POPのアーティストが日本語版の楽曲を出し、興味を持ってもらいやすくするというのと似ていると思います」(屋代氏)

韓国は国内の市場が小さいため、いち早くグローバル化に舵を切ったというのは、よく知られた話だ。佐藤氏は日本のエンターテインメント業界のグローバル化について、「10年後くらいに本腰を入れるようになるのでは」と持論を展開する。

「日本の市場はそこそこ大きく、日本でヒットを生み出せれば稼げてしまう。海外展開を今年中に成功させなければ食えなくなる、という危機感がないので、すぐにグローバル化するという話にはならないと思います。きっと今生まれた子たちが10年後くらいにアーティストやタレントを目指すとなったときに、海外も視野に入れるはずです。プロデュース側とアーティスト側の双方で『稼ぐために海外に行く』という思考が交わった瞬間、日本が本気で海外に行こうとなるのではないか、と思っています」(佐藤氏)

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そんな佐藤氏の言葉に続くように、鈴木氏は「人事評価の制度も変えるべき」と言う。

「日本のエンターテインメント業界の評価制度にも問題があり、短期的な視点でしか評価されない。短期間で国内で良い記録をとっておけば出世でき、一方で海外で失敗したら出世できないので挑戦するような機会が制度としてない。これは変えていくべきです」(鈴木氏)

Web3時代のエンターテインメント業界をどう考える?

昨今、NFTやメタバース、Web3といった新たなテクノロジートレンドが生まれつつある。それらを踏まえた上で、今後エンターテインメント業界はどうなっていくのか。セッションの最後、それぞれの登壇者が持論を展開した。