1日2500件の注文で、10年続いた赤字経営が好転

大槻:葛きゃんでぃは、テレビで取り上げられたことから1日で2500件の注文を受けたと聞きました。どんな経緯で誕生した商品だったのでしょうか。

:葛きゃんでぃは、私が家業である和菓子屋のをかのを営む岡埜本店へ入社して4カ月後くらいに誕生した商品です。当時は10年ほど続いていた赤字から脱出するために、お店の商品を見直していました。その1つが葛ゼリーだったんです。母と話しながら葛ゼリーを食べていたら「あなたは、ゼリーを凍らせて食べるのが好きだったよね?」と言っていたんです。私は忘れていたんですが、葛粉の問屋さんに聞いたら、凍らせて食べることができると知り、それをきっかけに誕生したのが葛きゃんでぃでした。

和菓子に使われる葛粉で作った葛ゼリーを凍らせた「葛きゃんでぃ」 画像提供:五穀祭菓 をかの
和菓子に使われる葛粉で作った葛ゼリーを凍らせた「葛きゃんでぃ」 画像提供:五穀祭菓 をかの

商品として発売後、嬉しいことに話題になりました。テレビで取り上げてもらったのは、販売してから1年ほど経ったころ。すでにネット販売を始めていましたが、放送後にサーバーも電話回線もパンク。トラブル続きでしたが、1週間で500件ほど注文が入りました。

大槻:何をきっかけに、テレビで取り上げられたんですか。

:きっかけは、Instagramでのタグ検索です。それほどフォロワーがいたわけではありませんが、葛きゃんでぃ以前から個人でInstagramでの発信をしていました。テレビ局の人たちは中山道で創業100年以上続く老舗の和菓子屋を探していたようです。そうした背景から、Instagramでのタグ検索で葛きゃんでぃを見つけてくれて。Instagramに投稿していなかったら見つけてもらえなかったかもしれません。

Instagram発信に続いて、ネット販売で使用するサービスをBASEに変更。新商品として季節ごとに中身の果物が変わるフルーツ大福の販売をスタートさせていました。その1カ月後に、葛きゃんでぃを紹介した番組を再放送すると連絡があったんです。前回は1週間で500件だったところ、再放送では24時間経たないうちに2500件もの注文が入りました。おかげでお店の知名度も上がり、業績はV字回復。2020年には黒字化も達成できました。

テレビ効果を継続させたメルマガの定期配信

 

大槻:テレビで取り上げられるなどの大きなイベントがあると、どうしても受け身になりがちです。うまくヒットの波に乗れず、1週間後には忘れ去られたりします。葛きゃんでぃは、ヒットの熱量をどうやって持続させたんですか。

:基本的に、私は戦略らしい戦略を考えるのが苦手です。どちらかと言うと、自分が持っている手札をすべて使うつもりで事業に向き合ってきました。SNS発信でも「フォロワー数を伸ばす」よりは、見た人が楽しくなるような投稿を心がけているくらいです。葛きゃんでぃについても、メディアの人たちが取り上げてくださったおかげで盛り上がりました。