ガバナンス改革の旗手として持てはやされる社外取締役。だが、実態はお寒い限りで、それなのに報酬はバブル化している。ダイヤモンド編集部は2年前から社外取の実態を透明化するために、日本の上場企業の社外取を網羅したランキングを紹介してきた。今年も最新版として「全1万590人」を網羅した実名ランキングを完全公開。独自試算で社外取を、報酬や兼務社数、企業業績など六つの軸で徹底評価する。1000点満点で1万590人を完全序列化した。特集『社外取バブル2024最新版「10590人」の全序列』(全14回)の#1では、最新ランキングの前編として、上位5000人の実名と総得点を紹介する。(ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)
見識と胆力がなければ本来務まらない社外取
実態はお寒い限り、でも報酬だけはバブル化
社外取締役は近年、持てはやされてきた。2021年のコーポレートガバナンス・コードの改訂が大きな転機で、上場企業は、取締役の3分の1以上を社外取にすることや、取締役会の多様化などを求められるようになった。
その後も改革の流れは加速するばかりだ。昨年6月には政府が策定した女性版骨太の方針に、東証プライム市場に上場する企業に対し、30年までに女性役員比率を30%以上にするという目標が盛り込まれた。
岸田文雄首相が音頭を取る形で、社外取の求人マーケットは活況を呈している。特に女性は引っ張りだこで、中には何社も社外取を兼務することで年間数千万円を稼ぐ者も出てきた。社外取バブルはますます過熱している。
しかし、そもそも、なぜ社外取が必要なのだろうか。それは社外の客観的な目が企業経営の監督にとって重要だと考えられるからだ。
経営が誤った方向に行きつつあるときに、身内ばかりで凝り固まった同質的な集団では、しがらみもあって軌道修正ができない――。そういうことは確かにままある。
そういう場面で「おかしいではないか」と勇気を持って諫言し、間違いを改めなければトップの首をすげ替えることも辞さない。これこそが取締役会に健全な緊張感を与える、社外取本来の役割である。
そのためには現状を把握し、将来を見通す見識はもちろん、何よりも胆力がなければ、本当は務まらない。そういう人物であるなら、株主だって気前よく報酬が払えるだろう。
ただ、実態はお寒い限りだ。社外取の存在意義が試される、業績不振の企業や不祥事のあった企業をチェックすると、社外取が真価を発揮したとは思えないケースが少なくない。
例えば、自動車保険金の不正請求を繰り返したビッグモーターとの取引や、紅麹(こうじ)原料を含む機能性表示食品の健康被害など、不祥事を起こした企業の社外取は、果たしてその職責を果たしたといえるのだろうか(本特集#4『赤字・株価低迷なのに高報酬な社外取ワーストランキング【300人の実名】住友系で著名経済学者・官僚OBの名前も』や、#10『不祥事企業の社外取締役の「報酬額」を完全公開!富士通、日産、ENEOS…【全18社86人】』参照)。
そこで今回、ダイヤモンド編集部は、上場企業の社外取「全1万590人」の、報酬や兼務社数などで独自試算した実名ランキングをはじめ、計9本のランキングやリストを大公開する。
その目的は、もちろん彼ら彼女らが高額報酬などに見合った働きぶりを見せているかどうかの検証に役立てるためだ。株主総会シーズンのピークを前に、投資家にとっては必見の内容である。
まず独自ランキングの第1弾として、推計報酬額や兼務社数、業績など六つの評価軸を設定し、1000点満点で社外取全員の実名での序列化を試みた「総合ランキング」をお届けしたい。
今回は総合ランキングの前編として、社外取1万590人のうち、まずは上位5000人の得点結果を明らかにする。
それでは早速、詳細を見ていこう。なお、251~5000位の社外取については、氏名や社名で検索できる。併せてチェックしてほしい。