「1つひとつの買い物を振り返って、自分にとって好きなものや大事なものにお金を使うこと、ワクワクする使い方とは何かを振り返れるかどうかが、子どもにとっては大きな一歩。そのために出費の振り返りができる機能があります。次の段として貯金がある。『夏に欲しいゲームソフトが発売されるけれども今は手持ちのお金が1000円であと4000円足りない』となったときに、あと何カ月、毎月いくらずつ貯めていくかといった計画性を子どもが持つためのサポートが、このアプリでできるのではないかと考えています」(見原氏)

高校の授業で資産形成にも触れるようになったとはいえ、金融教育に割ける時間はそれほど多くない。「授業で得られるのは知識ですが、より大事なのはお金のよい習慣を身に付けること。これは実際の使い方や家庭内での会話で培うところです。シャトルペイはその部分をサポートできます」と見原氏は語る。

シャトルのチームが、プロダクトのあり方で議論が紛糾したポイントがある。「親が子どもを主として考えるためのプロダクト設計とは何か」という点だ。「子どもの自立を主として考えたとき、UXとして親にどこまで情報を見せ、コントロールを渡していいのかという点については、チームでもよく話し合っています」と見原氏はいう。

シャトルペイは、親が子どものお金の使い方を極端に縛ったり叱ったりするきっかけになるのではなく、子どもが伸び伸びと自律的にお金を使えるようになることをサポートするという思想をもってつくられている。もちろん、紛失時や不正利用時には親アプリからカードの利用を停止できるが、監視というよりは見守りやサポートを主な目的としている。

そこでプロダクトデザインにおいては、どこで何を買ったかなど、親が監視や管理をしたくなりそうな機能をあえて目に触れにくい奥の方へ入れてしまうか、あるいは出さないか、といった部分で議論が重ねられた。貯金の目標設定でも、子どもが設定した目標の名称を親アプリで見せるか見せないかでチームが紛糾。結局、ユーザーへの個別インタビューの結果を踏まえ、親が子どもの貯金のゴールを知っていることで共感が増す作用の方が大きいと判断して、表示することに決定したそうだ。

海外ではユニコーンも登場、プリカ×アプリによる金融教育市場

海外でもキャッシュレス決済の比率が高まるにつれ、プリペイドカードとアプリを軸にした、子どもの買い物見守りと金融教育の機能を提供するサービスが現れ、大きく成長している。