堀井氏によると米国や英国などでは銀行口座を夫婦が共同名義で作れる「ジョイントアカウント」が存在し、それぞれがデビッドカードを受け取ることができる。一方で日本の銀行法ではざっくり言うと「1名義人に対して1口座(名義人に対して発行できるカードも1枚のみ)」というルールがあり、同様の仕組みを実現できなかった。
スマートバンクの場合は自社で資金移動業のライセンスを取得することで、ペアカードのようなサービスを構築できているという。
ヒアリングを重ねて見えてきた「パートナーとの家計管理」の課題
ペアカードは「同棲がスタートするタイミングや結婚のタイミングなど、一緒に暮らし始める際に手に取ってもらうことが多い」(堀井氏)というが、具体的にはどのような課題を解決する手段として活用されているのか。
スマートバンクでは260件を超えるユーザーインタビューを実施し、パートナーとの家計管理の実情を探りながらサービスの開発を進めてきた。
たとえば共働きの夫婦の間で生活費を管理するために用いられていた手段の1つが、「どちらかの名義で銀行口座を開設する」というものだ。この場合、口座を作らなかったパートナーが残高や支出の状況を把握しづらいことがネックになる。
同棲カップルの場合はそもそも家族カードを作れないため、別の手段で対応するしかない。堀井氏の話では「リアルな財布を用意して現金で管理する」方法を採っているユーザーも一定数存在するそうだが、課題になるのが立替精算だ。外出先など、家計管理用の財布を持っていない時に生活費の支払いが生じると、後から面倒な立替精算の作業が発生する。
B/43のペアカードであればキャッシュレス決済なので現金での支払いや管理が不要で、双方がリアルタイムに残高や支出の状況を知れる。パートナーとの関係性に関わらず各々にカードが発行されるため、立替精算も必要ない。
「3ヶ月間利用したユーザーのほぼ100%が継続」高い継続率と決済単価に手応え
近年はスマートバンクだけでなくKyashやカンム、ナッジなどがそれぞれのアプローチでカードと連動した新たな金融サービスを展開している。スタートアップ以外が手がけるサービスも含めて便利な選択肢が増えてきているが、B/43のペアカードのような仕組みでパートナーとの支出管理にフォーカスしたものはほとんど存在しなかった。
「クレジットカードの家族カードくらいしか代替手段がないような状況であり、だからこそ多くの人に手に取ってもらえるような状態が作れている。(そういった観点では)ユニークなポジションが築けているのではないかと感じています」(堀井氏)