スタートは「ワンルームでのパーソナルトレーニング」

“起業”という観点で加藤氏にとって1つの転機になったのが大学3年生の春だ。

コロナをきっかけに今まで通りに部活や授業ができなくなり、ジムにも通えなくなった。自由な時間が増えたこともあり、最初は「ワンルームを借りて自分のトレーニングをしつつ、パーソナルトレーニングを通じてお客さんのサポートができればいいなくらいの気持ち」だったという。

バイクを買うために貯金していた数十万円を元手にスペースとマシンを調達して事業を始めたところ、少しずつ顧客が増えていった。一方でサービスの構造上どうしても属人性が高く、大学との両立に課題を感じたほか、「もっとたくさんの人に使ってもらえてフィットネス人口自体を増やせるような取り組みをやれないか」と考えるようになったという。

そこでクラウドファンディングも活用しながら新たな物件を借りてスタートしたのが、学生限定の会員制ジムだ。外部のシステムを活用しながら現在のLifeFitと同じように月額2980円で気軽に通える仕組みを作ったところ、初月から数百人の会員が集まった。

ワンルームを借りて運営していたパーソナルトレーニング用の施設(左)と学生向けに展開していたジム(右)
ワンルームを借りて運営していたパーソナルトレーニング用の施設(左)と学生向けに展開していたジム(右)

「価格を抑えることで多くの人に使ってもらうことができる。その手応えをつかめた一方で、当時は外部のシステムをぶつ切りで使いながら運営していたことに加え、スタッフも必須のような体制だったため、改善できる余地も見つかりました」(加藤氏)

そのような背景から2021年の夏に外部投資家から資金を調達し、システムの内製化に着手。約半年の準備期間を経て、2022年2月にLifeFitの1号店をオープンした。

IT活用で無人化実現、月額2980円のカラクリ

ジムの様子
LifeFitの様子。入館の手続きもアプリを用いる

利用者の視点では、価格の安さと手続き面の簡単さがLifeFitの大きな特徴だ。問い合わせや入会手続き、ジムの入退室などはすべてアプリで完結。入会や退会のためにジムに行き、紙の手続きをする必要もない。

清掃やマシンのメンテナンスなどは人が対応するものの、基本的には無人型のジムを想定した作りになっており、人件費などのコストを削減することで価格を抑えて利用者に提供できる仕組みだ。

現在LifeFitでは直営店とフランチャイズ店を合わせて関西で3店舗を展開している。一部のフランチャイズ店を除きジムは24時間運営しており、利用料金は月額2980円(税込3278円)と都度利用500円(税込550円)から選べる。

この料金体系でも事業として成立するのかが気になるところだが、加藤氏の話では「(エリアや規模などにもよるが現時点での実績値としては)1年ほどでコストを回収できるような事業構造を作れている」という。