NOT A HOTEL AOSHIMAでは宮崎市が所有する土地を期限付きで借り上げ、土地の権利形態は準共有持分となっている。NOT A HOTELでクローズドに利用する物件部分以外の土地は宮崎市との協定により、レストランやバーベキュー場などがパブリックスペースとして公開されており、プールやサウナなどの建設も進んでいた。
完成したNOT A HOTEL AOSHIMAの各室は、今月いっぱいは関係者などによる試泊を行い、11月よりオーナーが利用。2023年以降にホテルとしての貸し出しを開始する予定だという。今回は1棟独立で屋内面積200平方メートル、テラスが560平方メートルと最大規模の物件「MASTERPIECE」と、2階に位置する総面積450平方メートル超の「CHILL」の内部を見た。
NOT A HOTELは「スイッチのないホテル」だと濱渦氏はいう。照明や空調だけでなく、カーテンの開閉や風呂の温度調節に至るまで、すべてタブレットにインストールされた自社開発のアプリで操作する。また、冷蔵庫を自社製作するなど、徹底して空間から「日常感」を排除するような工夫が施されている。
「ホテルとして貸せる物件」と「毎年同じ日に旅ができるNFT」との相性の良さ
実際の物件を見ると、パースで想像していた以上のラグジュアリー感に圧倒される。ただ、やはり「シェア購入でも1単位2000万円以上」という価格は、なかなか手が出せるものではない。それを「自分でも現実に使えるかもしれない」と思わせてくれた仕組みが、NFTを使った利用権の分割販売だ。
NOT A HOTELでは、物件の所有権(NOT A HOTEL AOSHIMAは厳密には不動産信託受益権の準共有持分)だけでなく、NFT化したホテルの利用権(メンバーシップ)を販売している。2022年8月に販売したメンバーシップは、2023年から2070年までの47年間、NOT A HOTELに年に1泊できるというもの。メンバーシップの保有者には年間のある1日が割り当てられ、毎年決まった日にいずれかの拠点の部屋がランダムに割り振られて利用できるようになる。
2070年までのメンバーシップ、および1泊分の権利はそれぞれ、NFTとして「OpenSea」などのNFTのマーケットプレイスで売買することもできる。
1単位150万円のNFTは販売開始からわずか20分で3億円分が売れ、その後は毎日約1000万円分ずつほど追加販売を行い、現在累計約5億円分が売れているという。10月には、メンバーシップ保有者に割り当てる日付を公開する、第1回目の「リビール」イベントが開催された。