濱渦氏は「日付がランダムに割り当てられるんですが、我々としては“偶然が旅する日になる”というコンセプトでいます。皆さん『ガチャ』的に捉えるというよりは『自分の旅する日が決まった!』と喜んでもらえたので、それはやはりうれしかったですね」と語る。

NFTによる利用権の販売が事業として面白い点として、濱渦氏は「稼働率」を挙げる。

「普通のホテルのスイートルームの稼働率は10%ぐらいなんです。残りの9割の未稼働の日のコストを宿泊者の方が払っていて、1泊30万円ですが1日当たりの売上って3万円なんです。僕らのNFTのモデルが成り立てば、日付と宿泊場所がランダムなので、1泊あたり3万円×稼働率100%になります。不在時にはホテルとして貸し出せる所有権の販売とホテルとしての利用権の販売の相性はとてもよく、NFTによるランダムなゲーム性もあるところもうまくはまって、今の完成形のNOT A HOTELがある、というかたちになっています」(濱渦氏)

もともとNOT A HOTELを「利用しない日にホテルとして稼働させる」ために手段をいろいろと検討していた濱渦氏だが、結果としてホテル利用に近い稼働がNFTで実現できているということのようだ。

所有権ではなく利用権を、47年間分、結構な金額で購入することには不安もある。何十年か後にNOT A HOTELのサービス内容が変わったり、会社が倒産したりする可能性もないわけではない。濱渦氏も「僕らは手段としてはNFTを選んでいるんですが、基本的には47年の前払い方式なんです」と認めた上で、このように説明する。

「枠組みとしてはちゃんと消費者保護を行っていて、メルカリのポイントなどと同様、前払式決済手段方式を採用しているので、売上の半分は金融庁に供託します。もし僕らが倒れても半額は返ってくることになります。僕らは建物も建てているので、そんなにすぐに潰れることはありません。事業性がなければ融資も下りませんし、出資もしてもらえないので、僕らの信頼プラス供託金によって、徐々に信頼してもらえたらいいなと思っています」(濱渦氏)

所有権を購入した人たちは企業の経営者や役員といった層が大半だというが、NFTの購入者はサラリーマンを含め幅広いという。金額が物件と比較すれば手頃だったことに加え、流動性の高さが魅力となったようである。8月の販売開始から2カ月で、すでに2000万円ほどの二次流通があったという。