2年ほど前、私はカーボンニュートラルに向けて航空の世界で何かできることがあるのではないか、といろいろと仮説を立てていました。降下時の経路と速度を能動的に制御したいと考えていた時に、伊藤先生から教えていただいたのが、「FPA(Fixed-flight Path Angle /固定飛行経路角)降下」というアイデアです。

FPA降下とは、航空機の降下角度を一定にすることで、推進力を抑えて、燃料消費の削減が期待できる降下手法 資料提供:NABLA Mobility

東大航空 伊藤恵理(以下、伊藤):田中さんから相談を受けた際に、「Peachの舩井(康伸)さんなら、何か一緒にできるんじゃない?」と気軽に答えたのです。舩井さんは私たちの研究にも興味を持ってくださっていて、絶対協力してくださると確信していました。

田中:伊藤先生以外に相談した元管制官の方からもお名前が挙がったので、舩井さんにご相談にいきました。結果として、現在の3者での座組みを舩井さんからご提案いただき、今回の連携がスタートしました。

NABLA Mobility CEO 田中辰治氏

Peach 舩井康伸(以下、舩井):もともとFPA降下とは別の、機上コンピューター上で降下角度を導き出す「CDO (Continuous Descent Operation:継続降下運航)」と呼ばれる降下手法が関西国際空港をはじめ、一部の空港で取り入れられていました。しかし、この手法は深夜など航空機が混んでいない時間帯でしか用いることができません。CDOでは、実施する航空機のトラジェクトリ(降下パスや速度)を管制官が予測するのが難しいという欠点があります。そのため、周囲の航空機と安全な距離間隔を確保することが難しく、航空機が混み合う時間帯に実施することができないのです。

しかし、CDOはかなりの燃料削減効果があります。これが広がれば、相当な環境負荷低減、燃料削減になると感じていたのですが、現時点ではこれ以上使う手立てがありません。そのため別の手段を模索しており、以前から伊藤先生が研究されている「FPA降下」には関心がありました。関心を寄せていた際にNABLA Mobilityからお声掛けいただいたので、伊藤先生にもご参加いただき、一緒にやることになりました。

田中:大きな役割分担としては、東大航空は研究・分析と評価、Peachは運用面でのフィードバック、我々は社会実装です。伊藤先生からこれまでの研究成果で得た知見を教えていただきながら、当社は、社会実装のために必要なことを考え、実装に向けたソフトウェア化を進めています。

舩井:Peachは運用する側です。運用には管制官とパイロットが関わります。実際にFPA降下を実施しようとすると、パイロット側の作業負担が重要になります。そこで、実際の運用をもとに当社から提案をしています。