「事業を始める前は英語学校のビジネスを大して理解していなかったのですが、実際にやり始めてから他社や業界のことを真剣に調査するようになりました。そこで気づいたのが、自分たちが考えていた改善を進めるほど、既存の英会話スクールに近くなっていくということ。もちろんそれでも価値はあるとは思うのですが、既存のパイを奪い合うだけになるのではないか。自分たちが今の事業を進めた先に、日本の英語教育に変革が訪れるのかというと、そうではないと感じたんです。これまでの教育インフラではなかなか英語が習得できなかった人でも、英語が得意になるようなイノベーションを生み出すことに挑戦したいと思い、一度教室を閉じることを決めました」(幾嶋氏) 

幾嶋氏が当時思い描いていたのは「普通の人が、普通に努力して英語ができるようになる」サービス。それを実現するためには「英語学習における無駄」をなくす必要性を感じていた。

「学習効率を上げるためには学習量を圧縮するべきだと感じていました。例えばTOEICのスコアが700点くらいの人の場合、宿題を出すとだいたい7割くらい正解してくる。すでに解ける問題が7割ほど含まれていることになり、その問題を何度も解く必要はありません。また宿題の中にはスコアが900点を超える人でも間違える難問もあります。もし目標が800点とか900点を取ることであれば、このような問題に関しても解く必要はない。目標を達成する上で必要のない問題を取り除くことができれば、効率が大幅に上がるという考えは当時からありました」(幾嶋氏)

幾嶋氏が事業の方向転換を考えていた2014年から2015年にかけては、次のトレンドとしてAIやビッグデータへの注目度が高まり始めていた時期だ。幾嶋氏はテクノロジーを活用すれば「一人ひとりのユーザーに対して対策すべき問題のみをレコメンドする仕組み」を実現できると考え、試験的なウェブサービスを立ち上げることを決めた。

軸となる要素は「学習用のソフトウェア」「良質な問題コンテンツ」「ユーザーごとに必要な問題を予測してレコメンドする仕組み」の3つ。本格的なものを作るにはある程度の資金がいるため、まずは自らプログラミング学習サービスの「ドットインストール」などで勉強しながら開発を進めた。

問題コンテンツは留学生や帰国子女の知人などの協力を得ながら自社で制作。レコメンドエンジンにはデータが不可欠なため、それ以外の部分を用意することにした。