2016年に社長に就任し、4年半の任期の中で、通信分野以外での収益源を選び取るべく、スマホを軸として金融やコンテンツサービスを強化する構想を推し進めた。

2020年3月には5Gサービスを開始したことで、将来的なIoTや産業分野などへの事業展開の余地を得た。

2020年1月、「DOCOMO Open House 2020」にて5Gサービスについて説明する吉澤社長

新技術への転換を陣頭指揮した吉澤氏は、市場環境の変化を肌で感じているようだ。スマホの登場によって、GAFAのようなプラットフォーマーの影響力が増し、携帯キャリアの影響力は相対的に低下した。5G展開にあわせてネットワーク設備の仮想化(ソフトウェア化)も進みつつあり、今後さらなる競合が登場する可能性もある。

「5Gがスタートして、市場は変わった。競争環境はモバイルだけではなくなった。視点を広げて勝負する必要がある。その必要性を実感してきた」と吉澤氏はふり返った。

ドコモをNTTグループの総合窓口に

ドコモ子会社化の理由として挙げられたのは「経営リソースの効率化」と「ネットワークの強化」「研究開発体制の強化」だ。

完全子会社化を通じて、ドコモはNTTグループとの連携を強化し、スマートフォンにとどまらず、固定通信その他幅広いサービスを扱う企業を目指す。

経営体制の面では、NTT傘下のNTT ComやNTTコムウェアとドコモの連携を強化していく方針が強調された。全国に店舗や法人営業網を持つドコモが2社のサービスを拡販する。ドコモにとってはモバイル通信以外の商品ラインナップを得ることになる。加えて、営業リソースなどの重複する組織体制を整理し、ビジネスの効率化を狙う。

NTT Com、NTTコムウェアとのグループ内連携が強調された 会見動画よりキャプチャ

澤田氏は「ドコモへグループのさまざまなリソースを集中し、グループ企業とのシナジーを高められる。ドコモがNTTグループの中核となり、料金値下げも可能となり、良いサービスを出していく。そして研究も行う。そうして事業が広がっていく。ドコモはグループの宝だと捉えている」とグループ内連携の意図を説明している。

なお、同じNTTグループの上場企業、NTTデータについては発表の中で「今後の子会社化の予定はない」と言及されている。わざわざ言及した理由について、澤田社長はNTTデータは海外事業が強く、NTTグループ外との取引が多いことなどを説明した。

「6G」開発で連携強化

研究開発の分野では、NTTとNTTドコモがそれぞれ持っている研究所の連携を強化する。NTT研究所が強みとする固定通信の基礎技術をドコモ研究所へ迅速に展開する体制を整えるという。

ドコモは“5Gの次”の「6G」の構想を既に公表し、仕様を提案するための調査に入っている。また、NTTは次世代ネットワーク構想「IWON」を掲げ、研究を進めている。