6G時代には高速通信のネットワークが宇宙から海まで広がり、固定とモバイルの垣根はなくなり、通信ネットワークを意識しなくてもつながれる……というのが未来のネットワークの構想だ。理想のネットワークでは、ユーザーにとっては固定通信かモバイル通信かは区別がなくなる。その前提を踏まえると、固定通信とモバイル通信の技術を一体で開発するのは合理性があると言えるだろう。

ドコモは6Gで目指す世界観をまとめたホワイトペーパーを公開している 会見動画よりキャプチャ

「結果として、値下げが実現する」

子会社化を決めたきっかけとして、総務省が繰り返し求めている“値下げ要請”があるのかと問われた際、澤田氏は「値下げと子会社化は完全な別事象。並行しているが要因ではない」と否定。

その上で「子会社化によって、財務基盤が改善し、ドコモは強くなる。その結果として、値下げが実現することになる」と付け加えた。

「競争のための方法論だ」

ドコモにとってはNTTとの結びつきを強めることが、競争力の改善につながる。

一方で、モバイル分野で競合となっているKDDI(au)やソフトバンクモバイル、楽天モバイルにとっては、大きな脅威となる可能性もある。ドコモは依然として携帯電話契約数でシェア約40%を維持するガリバーだ。


これに対しNTTの澤田社長は「30年間で時代は変わった。ドコモは1980年代後半、シェアは100%だった。それが40%まで落ちた。他社の30〜20%に拡大している」と会見の中で繰り返し強調。

「もはやドコモがとても大きく、他社がとても小さいという市場ではない」とも述べ、ドコモは大手3キャリアの中で利益率が最も悪い状態だと指摘。ドコモの競争力強化の正当性を主張した。

NTT法の制約については固定通信網に対するもので、澤田氏は今回のドコモ子会社化に法律上の問題はないという認識を示した。総務省にも事前に説明を行っているという。

NTTの澤田純社長(左)とNTTドコモの吉澤社長。澤田氏は会見中「ドコモのシェア40%に低下」と3回言及。その度に「吉澤君、ゴメンね」とこぼし笑みを浮かべていた 会見動画よりキャプチャ

一方、競合のKDDIは「NTTの経営形態のあり方については、電気通信市場全体の公正競争の観点から議論されるべき」(KDDI広報部)と批判。ただし、子会社化は“値下げ問題”とは別の事象だという認識を示している。

競合の懸念に対して、澤田氏の見解は明快だ。

「ドコモが強くなれば、ソフトバンクやKDDIは競争で負けるかもしれない。そこで、競争が活性化する。それがいま必要なことではないか。ドコモ一強という認識を改めていただきたい。これは、競争のための方法論ですから」(澤田氏)