そのため多くの自治体では目視確認が主流になっているが、長時間かつ非効率な作業で人手がかかり、満足に実施できていないところも少なくないそう。目視のため、どうしても見落としや見誤りが発生することもある。

この課題の解決策として「スマホやドラレコレベルの簡単なセンサーを使って、目視点検よりも精度が高く、低コストで点検が実現できるプロダクトを実現する」というのがUrbanXのアプローチだ。

 

使い方はシンプルで、事前にアプリをインストールしたスマホか通信機能がついていて演算ができるドラレコを車両に取り付けて道路を走るだけ。撮影した道路のデータをディープラーニングを用いて解析し、損傷を含む画像のみが自動でサーバーへ送信される。

道路の様子はリアルタイムでウェブ上のダッシュボードに反映。 期間や損傷の種類(ひび割れなど)、対応状況(経過観察・補修予定・補修済み)などをいつでも確認することが可能だ。他のデータと合わせることで簡易的に路線を評価したり、維持修繕にかかる費用を予測したりする際にも使える。

東大時代の研究をベースに創業、数百万の道路損傷データを蓄積

 

アーバンエックステクノロジーズのメンバー。1番左が代表取締役の前田紘弥氏
アーバンエックステクノロジーズのメンバー。1番左が代表取締役の前田紘弥氏

冒頭で触れた通り、UrbanXは前田氏の東大時代の研究をベースにしたスタートアップだ。主要メンバーは土木関連のバックグラウンドを持つ者とソフトウェアエンジニアで構成。東京大学生産技術研究所特任研究員である前田氏や人間・社会系部門准教授の関本義秀氏(前田氏は関本氏の研究室の出身)らが中心となって立ち上げた。

「(従来の方法では)道路を点検する費用が高すぎる結果として、一部しか点検できていないことが問題でした。もし費用をグッと下げることができれば、網羅的な点検ができるようになる。安価なデバイスを使ってデータを取得し、そのデータから道路の状況を可視化できれば課題解決に繋がると考えました。スマホやドラレコだけで実現できれば、日本全国の道路を毎日点検することもできるような気がしたんです」(前田氏)

5年ほど前から「汎用的なデバイスに搭載されるセンサーから取得したデータとディープラーニングを用いて道路の損傷を検知する研究」に取り組み、複数の自治体とも協力しながら実証事業を重ねてきた。

もともとは複数の自治体が参加するコンソーシアムとして、参加企業にシステムを提供する形でスタート。千葉市など11の自治体が参加しているほか、個別のカスタマイズを加えた自社プロダクトという形で東京国道事務所での試験利用も始まっている状況だという。