「アレクサンダー氏の本は、刑事司法制度において有色人種のコミュニティ、特に黒人コミュニティがいかに不当にターゲットにされているかについて、優れた考察をしています。大量投獄に関する歴史と数に関する解説が特に優れている点です」(ゲイツ氏)

『Range: Why Generalists Triumph in a Specialized World』デイヴィッド・エプスタイン(著)

2014年にスポーツ科学ジャーナリストであるエプスタイン氏のTEDトークを見てから、同氏の著書を読むようになったというゲイツ氏。この書籍は“スペシャリスト”に引け目を感じている“ジェネラリスト”にこそ読んでほしい1冊なのだという。

「世界はより“専門性”を求めているように見えるかもしかもしれませんが、実際に必要とされているのは、多様な経験や視点を受け入れながら成長していくジェネラリスト。エプスタイン氏はこのように説明しています」(ゲイツ氏)

『The Splendid and the Vile: A Saga of Churchill, Family, and Defiance During the Blitz』エリック・ラーソン(著)

ゲイツ氏がおすすめするこの歴史書の舞台は1940〜41年。内容はドイツ軍による爆撃に怯えていたイギリス市民についてだ。

「当時のイギリス市民が経験した恐怖は、我々が新型コロナウイルスの感染拡大で経験した恐怖よりもはるかに深刻なもの。それをこの本を通じてより身近に感じることができました。当時のイギリス市民はどのような生活をしていたのか、鮮明に感じとることができました。首相のウィンストン・チャーチル氏やその側近についても良く描かれています」(ゲイツ氏)

『KGBの男 冷戦史上最大の二重スパイ』(中央公論新社)ベン・マッキンタイアー(著)小林 朋則(訳)

6月に日本語訳が刊行されたこの歴史本は、イギリスのために二重スパイとなったKGB将校のオレグ・ゴルディエフスキー氏と、CIA工作員でKGBとの二重スパイとなったオルドリッチ・エイムズ氏に焦点を当てている。

「マッキンタイアー氏によるこの書籍は、ゴルディエフスキー氏を含西側の情報だけでなく、ロシアの視点も含んでいます。僕が好きなスパイ小説と同じくらいエキサイティングです」(ゲイツ氏)

『Breath from Salt: A Deadly Genetic Disease, a New Era in Science, and the Patients and Families Who Changed Medicine』ビジャル・P・トリヴェディ(著)

ゲイツ氏が最後におすすめする書籍は、遺伝子の変異が原因となって発生する常染色体劣性遺伝疾患の1種である「嚢胞性線維症」に関するものだ。

「驚くべき科学的革新がいかに嚢胞性線維症の患者や、その家族の生活を改善してきたかを記録しています。登場する家族を知っているので、私にとっては非常に大きな意味を持つ書籍です」(ゲイツ氏)