その一方で、法人に比べて行動制約の弱い個人においては、リアルへの戻りが相対的に早く動いたのも印象的でした。リアル体験の強さを改めて感じる年でもあったと思います。 混迷を極めた環境の中で、ジャフコとしても出資先、スタートアップ業界にどのように貢献していくのかをしっかりと見つめる良い年でした。対面や展示会での営業が困難になる中で、出資先の営業・売上実現を後押しするため、社内データベースを整理し、オンラインでの展示会、交流会を弊社主導で開催、2000名以上の集客を行いました。

また資環境に不透明さが出る中で、スタートアップへの向き合い方を正しく伝えるためのブランディングの変更など、コロナ環境だからこそ、高められたことが多々あった1年でした。

2021年は「個人の感情の行方」、「DXの先のデジタル融合」に注目

「個人の感情の行方」、「デジタル統合を中心としたニューテクノロジーの進化」の2つの点で、新たな領域・プロダクトの出現・発展を期待しています。

1つ目の、個人の感情ですが、2020年の振り返りで書いた通り、コロナ後は従来当たり前に行っていた行動が困難になる中で、オンラインを中心に代替手段の模索が行われました。一方で、代替手段では補い切れてない個人の感情がまだまだ多く残されていると感じております。今までとは違う行動、周囲との隔離によって生まれた孤独感や不安や不満、リアルで満たしていたけれど満たされなくなった欲求の行き先として、2020年のコロナ禍の延長で成長軌道に乗るサービスが出現するものと考えています。

満たされなくなった人々の欲求の行き場として、端末普及も加速し始めたVRや、生活習慣の変化によって、リアルで失った人との関係性や欲求をオンライン上で満たす次世代のSNSなどの出現に期待しております。

2つ目は、デジタル統合によるディープテックの更なる進化です。2020年はコロナによって各社がDXを推進しましたが、その更なる先として、デジタルを融合することによって従来では参入困難だった領域での新たなテクノロジー・スタートアップの成長・出現を期待しております。

デジタル化による各プロセスの効率化は全体の費用の低下を生み、これまでコストバランスの取れなかったテクノロジーのビジネス化を実現します。例えば、AIを中心としたソフトウェアの下支えにより、低コストのレーダー衛星を開発・サービス化する「Synspective」や、脳画像を筆頭に人の情報を解析し日本の社会課題である認知症にアプローチする「Splink」などがあげられます。