「僕がVAZを創業した2015年ごろ、すでにYouTubeは人気でした。そのタイミングでYouTube領域に参入したのは、ビジネスが起こり始めていたからです。予想どおり、翌年にはYouTube内で課金できるようになり、続々とYouTuberが登場しました」

「それと同じ動きがTikTokでも起き始めています。TikTokの運営元であるバイトダンスは、テレビCMで上戸彩さんを起用するなどマス向けの戦略でエイジアップ(ユーザー層の年齢が上がること)に成功したほか、さらにShopifyとの連携も発表しています。今後、競争が激しくなることはほぼ確実なので、EC機能が実装されてから参入していては遅いのです。『TikTokに参入するなら今しかない』と思い、2021年4月に創業したのがPienです」(森氏)

「経営者とは言えなかった」VAZ時代

Pienの今後をうらなう上で、避けて通れないのが、森氏のVAZでの失敗だ。森氏は「僕は経営者とは言えなかったんです」とVAZ時代の失敗について、こう振り返る。

表向きには「今後VAZが成長していくために必要な選択」「代表を辞する意思決定は、最終的にコロナが影響しています」と説明しているが、退任の背景にはVALU騒動や給料未払いなど経営面での問題などもあった。実際「経営に対する考え方が甘すぎた」と森氏は語る。

VAZはYouTuberの黎明期だった2015年7月に創業。ヒカルや禁断ボーイズ、ラファエルといった人気YouTuberとのグループ「Next Stage」を結成し、創業2年目の売上は月次で1億5000万円を記録。前年度比1000%以上の成長ぶりを見せるなど、瞬く間にUUUM(ウーム)と肩を並べるほどのYouTuberプロダクションにまで登りつめた。

そんなVAZを語る上で欠かせないのが、2017年に起きた「VALU騒動」だ。VALU騒動とはビットコインを使った擬似的な株式(以下、VA)を発行することで、自分自身の価値を売買できるプラットフォーム「VALU」(編集部注:2020年3月にサービス終了)での取引をめぐり、VAZに所属していた人気YouTuberのヒカル氏、ラファエル氏、いっくん氏(禁断ボーイズ)が批判を受け、炎上した問題。

当時、人気が急上昇していたヒカル氏たちのVAは人気YouTuerということもあり、連日ストップ高での買い注文が続いていたが、ヒカル氏たちは何の告知もなく所持していたVAを突然すべて売却。それまで高騰していたVAは暴落したことで、株主(VA保有者)が大打撃を受ける事態となった。