「ふたを開けてみると半分以上の取引先は個人店なんです。そこでは今でも電話やファックスなどがメインで、最近ではLINEやFacebookなども活用され始めてはいるもののマルチチャネル化していて業務が煩雑で負荷も大きい。また当日注文を受けて当日のうちに配送するので、深夜帯に受注するだけの人員を確保する必要があり、過酷な労働環境になりがちです。それが間違いの発生や人材難に陥るといった悪循環に繋がり、長い間改革がされてきませんでした」(川野氏)

実際にヒアリングをするとまだまだ解決されていない課題が残されていることに気づいたという
実際にヒアリングをするとまだまだ解決されていない課題が残されていることに気づいたという

たとえば受発注が属人的で「いつものパスタ1つ」といったオーダーがくることも珍しい話ではない。「いつものパスタ」が何を指しているのか、普段から接している担当者以外にはわかりづらい上に、こうした注文はミスの原因になりやすい。

また基幹システムにデータを集約するため、受注した情報をスタッフがわざわざシステムに手入力しているケースが多く、それも負担の増加や間違いの発生に繋がっている。

「膨大な業務で時間がないため、目利きや商品提案といった人間しかできない仕事になかなか時間を割けない。本当は販促の部分で商品提案をもっとやりたいけれど、受注業務で一杯一杯のためできないということを皆さん課題に感じています。自分たちは後発ではありますが、これらのペインポイントについては受注者に寄り添うことでまだまだ解決できる余地があると思い、TANOMUを始めました」(川野氏)

TANOMUのイメージ画像
TANOMUのイメージ画像

“業界の巨人”が苦手なところを徹底的に研究

一方のインフォマートにとって、タノムはどのように映っていたのか。インフォマートの長尾氏と濱嶋氏は同社の印象について「自分たちの弱いところや得意ではないところをしっかりとやっていると感じた」と口を揃える。

「フード領域については『あえて、しっかり作りすぎない』というのが我々は得意ではないと思っています。大規模チェーン店など規模の大きい顧客を中心に事業を広げてきたこともあり、取引が始まってから終了するまで漏れなく機能を詰め込んできた。今の時代、世の中には機能を絞り込んだシンプルなITサービスもたくさん存在します。顧客にとってはその方が使いやすい場合があっても、自分たちは(今からその判断を)できない部分もある」(濱嶋氏)

インフォマートコーポレート・デベロップメント執行役員で資本業務提携の担当者も務めた濱嶋克行氏。濱嶋氏自身も現場で事業者の声を聞くことが多く、その中でタノムを知ったという
インフォマートコーポレート・デベロップメント執行役員で資本業務提携の担当者も務めた濱嶋克行氏。濱嶋氏自身も現場で事業者の声を聞くことが多く、その中でタノムを知ったという

これは川野氏からすれば狙い通りだった。サービス開発前の時点でインフォマートが巨人として君臨していたため、「どのようなアプローチで業界に入っていくべきか」「もしインフォマートが上手くいっていない部分があるとすればどんなところか」を顧客のもとに足を運びながら、徹底的に研究したからだ。