スマートフォン用ゲームでは、ゲームの前半部分や基本機能を制作してリリースすることが多い。人気が出れば続編部分や機能の追加を続けていくことになるし、人気が出ずに課金収入が少なければ、早期にサービスを終了することも少なくない(それでもかなりの赤字は出るが)。

ところがゲーム機用ソフトはハードウェアメーカーに支払うロイヤリティや流通コストなどの関係もあり、最低でも5000~6000円で売れる商品(パッケージ版ソフトの場合)を作らなければならない。この価格に見合うだけの内容が求められるため、「前半だけ作って様子見」という訳にはいかない。

ゲーム機用ソフトの多くは数千万円から数億円の開発費を投じている。そんな大金をかけて作ったゲームが売れなかった場合、ゲームメーカーは大きな損害を被ることになる。以前であれば大ヒットしたタイトルの利益を使ってヒットしなかったタイトルの赤字を補填していたが、大ヒットするタイトルが限られている中では、その手法が通用しなくなってきているのだ。

この状況を打開する一番の方法は、ヒットする可能性が高いソフトだけを作り、ヒットする確率が低いソフトは作らない、または発売しないということだろう。だが、これを徹底すると新規シリーズが生み出せなくなるため、ヒット作の続編が売れなくなることが、そのままゲームメーカーの終焉につながってしまう。このジレンマを解消すべく生み出された新たな仕組みが「シーズンパス」だった。

ゲームビジネスを変えた「シーズンパス」という新たな金脈

シーズンパスとは、単体で購入するような有料DLCと異なり、期間中に配信された有料DLCはすべて入手可能な権利を売るというモデルだ。名前は野球の「シーズンシート」のように、期間中のすべての追加コンテンツを利用できるということに由来している。

有料DLCの販売自体は古くからあるが、家庭用ゲーム機の世界にシーズンパスというモデルを導入した最初の作品は、2011年にPlayStation 3およびXbox 360用として発売された『L.A.ノワール』(発売元は『グランド・セフト・オート』シリーズで有名な、米ロックスター・ゲームス)の「シーズンパス」という商品だとされている。

このゲームはユーザーが刑事となり事件を捜査するという内容だが、シーズンパスを購入することで捜査可能な事件(シナリオ)が追加される。シーズンパスが発表されたばかりの頃は「パッケージ版を未完成品のまま発売するつもりか」「すべてのDLCを購入したら(パッケージ購入と同等の)結構な金額になる」といった、否定的な意見もユーザーから出ていた。