だがその後、ワーナーブラザースの『モータルコンバット』やエレクトロニック・アーツの『FIFA』『マッデンNFL』『NHL』といったといった人気タイトルがシーズンパスを採用。ユーザーにも徐々に浸透していくことで、ゲームメーカーの新たな“金脈”となったのである。

シーズンパスを初めて採用したゲームソフト『L.A.ノワール』。捜査可能な事件が追加されるほかに、主人公の衣装や武器なども入手できた 画像は公式サイトのスクリーンショット
シーズンパスを初めて採用したゲームソフト『L.A.ノワール』。捜査可能な事件が追加されるほかに、主人公の衣装や武器なども入手できた 画像は公式サイトのスクリーンショット

“お気に入り”をより長く楽しめるユーザーと、1つのゲームをより長く売れるメーカー

ゲームソフトの多くは7000~8000円と比較的高額であるため、購入してプレイした際に「自分に合わなかった」ソフトを買ってしまった時のストレスが大きい。そのため、好きだったゲームの続編が出るまではソフトを買い控えてしまうという層がいる。

ところが、楽しめたゲームに追加料金を支払うことでお気に入りのゲームより長く楽しめるのであれば、有料DLC購入に対する抵抗は低い。やり込んだゲームのセーブデータが引き継げるのも大きな魅力となる。自分の感性に合うかわからない別タイトルを買うよりも、ユーザーにとってはるかにローリスクだとも言える。

「ゲームをクリアするまでは遊んだが、そこまで好きにはならなかった」という温度感のユーザーであれば、有料DLCを購入しなければ済む話なので、購入しなかったからといって決して損をしているわけではないとも言える。

ゲームメーカーのメリットにもメリットは大きい。例えば「AAA(トリプルエー)タイトル」と呼ばれるような、ヒットが期待できるソフトなどは、発売前から有料の追加DLCを企画しておく。見事ソフトがヒットすればDLCを継続して制作すればいいし、売上が低迷するようなら制作を止めればいい。ソフト発売後の売上経過を見ながら、いわば“後出しじゃんけん”で開発リソースを投入するかどうか決められるため、ヒットするかどうかわからない新規タイトルを作り続けた場合に比べて、ビジネスとしての成功率も高まる。

ゲームメーカーの多くは徐々にこうした方針を採るようになってきた。その結果、発売するソフトのタイトル数を厳選する傾向にある。一例として、任天堂が過去数年に発売した新作ソフトのタイトル数の推移を紹介する。もちろんゲーム機自体の世代交代やそれに伴う開発環境の変化など、ほかの要因もあるだろう。だが、2020年のタイトル数は9本で、27本のタイトルを出した2015年の3分の1になっており、その傾向は明らかだ。

任天堂が発売したゲームソフトのタイトル数
 

DLCをリリースし続けるゲームメーカーのメリットはほかにもある。それはソフト発売後の時間経過による、ソフトの「新鮮さ」が失われないというもの。「●月●日に新規モンスターを追加」など告知をすることでSNSやゲーム系ニュースサイトで話題に上るので、ユーザーが継続してプレイしてくれるだけでなく、休眠ユーザーの掘り起こしにもつながる。もちろんこれは有料DLCに限った話ではない。たとえばニンテンドースイッチの『あつまれ どうぶつの森』では、発売から1年半が経過した今も、アイテムやイベントなどを無料DLCとして配信。ユーザーの興味を保ち続けている。