大規模なタイトルであるほど次回作が店頭に並ぶまでに時間がかかる(場合によっては数年規模になる)が、少しでも長く前作を楽しんでもらうことで、次回作を購入してもらえる確率も高くなる。

ニンテンドースイッチの『あつまれ どうぶつの森』では、発売から1年半が経過した今も、アイテムやイベントなどを無料DLCとして配信。ユーザーの興味を保ち続けている 画像は公式サイトのスクリーンショット
発売から1年半が経過した今も無料DLCを配信するニンテンドースイッチの『あつまれ どうぶつの森』 画像は公式サイトのスクリーンショット

ここまで、ユーザーとメーカーの観点でシーズンパスをはじめとしたDLCについて説明してきた。だがシーズンパスはゲームソフト販売店にも大きな影響を与えている。

有料の大型DLCを発売するようなゲームソフトは、DLC発売まで商品の人気をキープするため、毎月のように無料のDLCを配信している。結果として、ゲームをクリアしてしまったユーザーも「また追加コンテンツあるのではないか」と期待し、中古ソフトショップへ売ることをためらう。

その結果、中古市場へのソフトの流出が抑制され、中古価格が下落しないため、新品と大差ない価格で販売されることになる。結果として「値段が変わらないのなら」と、発売から時間が経過しても継続して新品ソフトが売れ続けるという現象が起きているのだ。その傾向は、ショップでのソフト売上げランキングにも現れている。以下は、「ファミ通.com」のゲームソフト販売本数ランキング(8月30日~9月5日)に、各ソフトの発売年月を追記したものだ(1位から30位までの完全版はこちら)。

ゲーム販売本数と
その発売日
クリックで1位から30位までの完全版を表示

ソフト売上げランキング上位30位中、直近1年以内に発売された新作ソフトは17タイトル。つまり残りの13タイトルは、発売から1年以上が経過しながら、「新品ソフト」としてショップで継続して売れているのだ。

ゲームソフトが高額商品であることは前述したとおりが、売価が高い商品が不良在庫になると、ゲームショップの利益を圧迫してしまう。だが長期間に渡って売れる定番ソフトが多くなるのであれば、ショップの利益率は向上する。

ユーザーも、メーカーも、小売店にもメリットがある有料DLCという販売方式。今後、この傾向はより増えていくことは容易に想像できる。たとえば2021年3月に発売したニンテンドースイッチ用ソフト『モンスターハンターライズ』も『モンスターハンターワールド:アイスボーン』と同様に、大型の有料DLCを用意しているのではないだろうか。

有料DLCの仕組みが、PS5販促の助け舟に

この有料DLCという販売方式は、PlayStation 5(以下「PS5」)の販促にも有効活用されている。

ファミ通の発表によると、PS5の国内推定累計販売台数が発売から43週で約10カ月で100万台(うち「デジタル・エディション」は16.5万台)を超えたという。だが、PS5は引き続き世界的な品薄が続いており、オークションサイトでは定価より2万円以上も高い価格(PS5の定価は通常版が5万4978円、ドライブのないデジタル・エディションが4万3978円。)で転売されているというのが現状だ。