そういうコンテンツであり、ビジネスモデルだったんです。間口を狭めて1日8組くらいしか受け入れず、客単価を上げて、「2年先まで予約でいっぱいです」みたいにしてしまう。僕の店だけ儲かることだけ考えれば、それで十分なのかもしれないけど、それだと幸せにできる人の母数はすごく限られてしまうんですよね。

──実際に、進んでいる案件はどのくらいあるのでしょうか。

どんどん案件は来ていて、今、手元で進んでいるのは40個くらい。来年も大手食品メーカーやコンビニとの商品開発が決まっていますし、ユーグレナのコーポレートシェフとして、ユーグレナを活用したメニューの考案も行っています。

これら全部、今までだったらミシュランシェフはやりたがらなかったことですよね。「こういうことはディスブランディングだ」と言われてきた流れを帳消しにして、僕はどんどんやっています。「1杯500円の牛丼と5万円コースのシェフの料理じゃ、根本的に違うじゃん」というのがこれまでの発想。でも、僕からすると、「いやいや、あの牛丼を500円のままでもっとおいしくできるタマネギの厚さはあるはずだから」と言いたい。

いろんな手立てで食は変えられる可能性を秘めているし、そこにシェフが介在する価値は高いと思うんですよね。

膨大なインプットと経験の蓄積が生み出す「直感力」

──おそらくたくさんのオファーが寄せられているはずですが、鳥羽さんが「やる」と決める判断基準は。

シンプルに、「幸せの分母が増えるかどうか」です。より多くの人を幸せにできるか。それだけで決めています。プラットフォームになるってそういうことじゃないですか。ただし、そのためには仲間が必要。プラットフォームとは大海賊船なので、優秀な人材を採って教育していくことが必須です。

──優秀な海賊団をつくるために何を大切にしていますか。

やはり圧倒的なビジョンの力だと思います。サッカーでも、「県大会1位」程度の目標に掲げる監督のチームには、優秀な選手は集まらないですよね。志が高ければ高いほど、そこ1に人生かけて働きたいと共感してくれる人が集まってくるわけです。

ホテルズで働くメンバーたち
ホテルズで働くメンバーたち

僕の目標が「年商10億円のYouTuberシェフになりたい」だと、世の中を変えられるほどのすごい仲間は集まってくれないですよね。だから、視点はできるだけ高く、俯瞰するようにしています。焦点は目の前の事業だけにフォーカスせずに、5年後を見ている感じです。

5年後を見ているから、ホテルズの日々の売り上げに一喜一憂することもないですし、僕自身は厨房に立たずにやっていって、それでも成功する。今に焦点合わせなくても成功するくらいじゃないと、5年後の風景は変えられないですよ。