「ワインを開けたけど飲み切れなかった……」
「知識がないから、選ぶのが難しい」

私自身もワインが好きだ。ただ、自分で開栓することすらできないし、1人でボトルを飲み切ることもできない。ワインに関する知識もなく、ラベルのデザインや友人・知人のオススメで何となくワインを選んでいた自分にとって、その声はとても共感できる内容だった。

次の日、上司や同僚にこのような話をすると「わかる」という声が多く挙がった。これはもしかして顧客のワインに対する潜在的な課題なのではないか。そう思い、すぐさま顧客に対する調査を行ってみると、実は私と同じような思いを抱えている人が多数存在するということがわかった。みんな、本当はワインをもっと気軽に楽しみたいと思っている。

ただ、その気持ちとは裏腹に、ボトルに入っている量を飲み切ることや準備や片付けが大変といったことがワインを飲むハードルとなっている。

また、ラベルに記載された情報を読み解くには知識が必要で、選ぶのが難しいといったこともハードルとなる。結果的に多くの顧客にとってワインは日常の選択肢から無意識に外れ “特別なときに飲むもの”になってしまっているのが現状だった。それにより、ワインの飲用接点がなかなか上がらないという市場全体の課題にもつながっているのではないか、と考えた。

このような課題を抱えている人たちに、新しいワインのカタチである「ワインの価値を残したまま、手軽に愉しめる体験」をつくって、何でもない日常にワインと過ごす幸せを届けたい。こんな想いのもと、新しいワインの飲用スタイルをお届けする本格缶ワイン「ONE WINE」の開発が幕を開けた。

すべての答えは顧客の声に

私にとって初めての商品開発に関わる経験が「ONE WINE」だった。最初はどうやって商品をつくり上げていくべきかわからず、朝から夜まで悩んだ日もあった。

そんな私たちを救ったのが、商品開発調査に協力いただいた100人以上の顧客の声だ。このブランドのミッションは顧客に「何でもない日常に、ワインと過ごす幸せ」を届けること。つまり大事なのは、自分たちがどうつくるのかではなく、顧客が何を求めているかを追求し、その答えを実現していくことだったのだ。

そこに気づいてから、商品の形状や量、デザイン、味、香り、パッケージという商品のことだけでなく、コピーやコミュニケーションの取り方まで、1つひとつ丁寧に調査を行い、本当に求められているものを導き出すことに膨大な時間を費やした。