顧客に対する調査は、ウェブのアンケート結果を見るだけではなく、プロジェクトメンバー自らが顧客と1時間ほど話をすることにもこだわっていた。このような部分にまでこだわったのはウェブのアンケ―トや報告資料だけでは見えない顧客のちょっとした表情や、話すトーンから本当の気持ちを把握するためだ。

顧客に最新のプロトタイプを見ていただき、少し曇った表情を感じ取るたびに、必死で改善策を練ってはまたヒアリングをする。そんなことを繰り返した。今となっては懐かしいと思えるような、不採用となったプロトタイプも数多く存在する。

1年半以上の開発期間を経て、商品化前の最終調査でようやく「こういうのが欲しかったんです」「これ、すごく気分が高まると思います」「おいしいワインがちょっとだけ飲めるなんて……!」という意見をいただくことができた。

 

ブランドのロゴとなっている“1”は、「1人でも、1杯からでも」ということ表現したものになっている。自分へのちょっとしたご褒美にも、少し時間がとれたときにも、趣味の時間にでも──少しでも多くの人に ワインと過ごす幸せを感じてもらえるように、という願いを込めてつけたものだ。

顧客目線で開発を進めてきたからこそ、ONE WINEは「絶対に顧客のワインに対する課題を解決し、新しいワインのカタチを届けられる商品だ」と強い自信を持つことができたのだと感じる。ONE WINEは、顧客の声によって出来上がったブランドだ。だからこそ、心のどこかにあった「誰にも求められなかったらどうしよう」という不安を払拭することができ、新しいことに挑戦する決意できたのだと思う。

目指したのは、最高の体験

私たちがONE WINEをつくるうえで最も大事にしたのは、「良いモノ」を生み出すことだけでなく、認知したときから、飲み終わった後も続く継続的な顧客の体験だ。

飲んでもらっている間はもちろんのこと、どの場所で知り、どんな経路でサイトにたどり着き、何を考えて種類を選び、届いた瞬間はどんな気持ちになったのか。そして、どのような形で再会することができたら、顧客に何でもない日常に、ワインと過ごす幸せを届けられるのかを考え、それぞれの体験での価値を徹底的に追求した。

例えば、ONE WINEの特徴とも言えるミニマルなデザインも、顧客の体験を考えて採用されたものだ。「ラベルの内容が難しくて、選ぶのに疲れてしまう」といった課題を解決するために、必要な情報以外を排除し、顧客の選択負荷の軽減を目指して設計を行った。