江崎グリコの基幹システム更新トラブルは、SAP導入を担当するコンサル、ITベンダー、社内IT部にとっても対岸の火事ではない。日常的にSAPを触っている、炎上プロジェクトの申し子エンジニアや大手コンサル勤務メンバーがトラブルの原因を大胆推理した。特集『DX180社図鑑』(全31回)の#2では、忖度なしの暴露・内輪話が満載の、恒例IT座談会の第1弾をお届けする。(聞き手/ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
Henry @HighWiz 大手SIerの大規模プロジェクトのPMを経て総合コンサルで活躍中
よんてんごP @yontengoP ブラックIT企業を渡り歩く病人X(旧Twitter)er。最近はブラックでなくなったらしい
むぎSE @MUGI1208 社内SE社畜ツイッタラー。炎上プロジェクトの遭遇率が高め
shin @shin_ofshins ウェブとアプリに詳しいコード書く系スタートアップ経営者
かち @kachi_saas 諸事情で外資ITソフトウエアベンダーを卒業★した人
SW @Diamond_IT_SW コンサルからメーカー情シスに移籍した企業哀戦士
サブスクマン 中途で大手SIerにログインするも、不採算事業を押し付けられログアウト寸前
グリコ障害、原因は在庫関連システムか?
旧システムに切り戻しができなかったのはなぜ?
――恒例のIT座談会です。今回はやはり、いまだ完全復旧に至っていない江崎グリコのSAP基幹システム障害からいきましょうか。8月にようやくプッチンプリン出荷が復活ということですが、それにしても長引きましたね。何が原因だったんでしょうか?
よんてんごP(よん) 知り合い経由でのまた聞き情報ですけれども、「SAPを導入したものの、在庫絡みのパフォーマンスでトラブったのでそれなしでいったん出荷しようということになった。別のシステムを立ち上げたのか、手計算で対応したかは不明だが、結局現物とシステムの在庫の数が合わなくなり、どうにもならなくて今の状態になった」と。多分、SAPに乗って他の機能は動いてるけど、在庫絡みだけうまくいかないから、前のERPに戻すことも難しい、みたいな感じかな。
shin チルドは止まったけど他のシステムは動いてるって状況なんだよね。
Henry 倉庫の在庫データが不一致で、賞味期限が長いやつは手作業でデータを直せるけど、短いやつは無理だったって報道はあったね。そこから想定されるのは、倉庫・物流システムと旧基幹システムが連携して自分たちの在庫を集計してきたけど、SAPに刷新する際に集計ロジックの実装をミスった、あるいはそもそもそんな集計ロジックの存在を認識できていなかったために作ってすらいなかった、とかね。
むぎSE(むぎ) 他の記事だと、チルドだけが入出庫期間が短くてそれ以外は手作業で修正が追い付いた、って書いてある。つまり全滅してたけど運用で回避したってことなのかもしれないね。
よん 状況をよく見ると、障害が起きた最初の時点で一度システムを使わなくなってるんですよね。ただ、在庫システムだけは生き残ったから、せっかくだし在庫使うかっていったらそっちもおかしくなった。在庫がズレると他も全部ズレる。
――しかし、ここまで主力製品の出荷ができない状態が長引くのは前代未聞ではありますよね。これまで使っていたシステムに戻すという選択肢はなかったんでしょうか?それから、今どのように復旧作業は進められているのでしょうか?皆さんの予想は?