フィンテックソリューション事業には同社が創業初期から取り組んできたコンシューマー向けの金融サービスのほか、金融機関に対するフロントエンドサービスの開発やソリューションの提供なども含まれる。
ビッグデータ解析事業では企業の保有するPOSデータやクレジットカードデータなどのビッグデータを解析。その結果を官公庁や国内外の金融機関へライセンスモデルで提供してきた。
Finatextの2021年3月期(決算期の変更により2019年12月1日から20201年3月31日までの16ケ月間)の売上は27億5100万円で、経常損失が7億5700万円。セグメントごとの売上では金融インフラが約9.5億円、ソリューションが約12.4億円、ビッグデータ解析が約5.7億円となっているが、今後は金融インフラ事業を中核に置き、同セグメントの売上を拡大させていく計画だ。
当面の主要なターゲットとしては、大手の金融機関や事業会社を見据える。特に既存の金融機関は従来の基幹システムに対して課題感を持っているケースが多いため、Finatextのサービスの価値を感じてもらいやすいという。
この領域は参入障壁が高く「一度導入すると取り除く方がコストがかかるため(よほどのことがないかぎり)スイッチングされない」(林氏)のが特徴。だからこそFinatext自身も既存の基幹システムを置き換えるのは容易ではないが、事業者が新しいデジタルブランドを立ち上げる際に自分たちのサービスを選んでもらえれば、大きなアドバンテージを得られる。
今回のタイミングで林氏が上場を決めたのも、大手事業との取り組みを加速させることが1つの狙いだ。
「上場していないことで、大手企業との取引に膨大な時間がかかってしまうこともありました。事業のスピードを加速させるとともに、確度を高めていく上でも上場企業になることの意味は大きいです。また今後事業を成長させていくためにも、会社を『燃えるモノ作り集団』にしていきたいと考えています。(上場することで)今まで以上に多様な人たちを巻き込んでいきたいという狙いもあります」(林氏)
目指すは金融インフラの再発明、「融資」や「決済」領域も見据える
短期的な展望としては「金融インフラ事業のパートナー(導入企業)数」の増加を目指していく方針だ。現在のパートナー数は契約合意済みの企業も含めて13社。組織体制も強化しながら、今後はパートナーの開拓をさらに加速させていくことを目指す。
これまでは大企業向けにフロントエンド側の開発サポートなどと合わせて提供することも多かったが、汎用的に使える“モジュール”が拡充されていけば、より事業規模の小さいスタートアップも顧客対象になりうるという。