入社5〜10年の経験値が
キャリアの土台になる
星野佳路
ほしの・よしはる/1960年生まれ。長野県出身。慶應義塾大学経済 学部卒業後、米コーネル大学ホテル経営大学院修士課程修了。91年 星野温泉旅館(現星野リゾート)代表に就任。経営破綻したリゾート ホテルや温泉旅館の再生に取り組みつつ、多様な宿泊施設を運営。
Photo:Masato Kato
——それでは、就活を経て社会に踏み出した学生たちが、自分のキャリアのスタートラインに立ったとき、心がけておくべきことは何でしょうか。
どのような業界で働くにせよ「最初に最前線の現場を経験する」ことが非常に重要だということです。なぜなら、そのビジネスの価値を生んでいるのは最前線の現場の仕事であり、そこに一番重要な情報が集まっているからです。
私は、仕事を始めて最初の5〜10年の経験値が、その人のキャリアにおいて大きな価値を生むと考えています。
観光業で仕事をしている人でも、投資家を目指す人、開発会社に行きたい人、コンサルタントになりたい人など、目指しているキャリアはさまざまです。
将来的にどのような仕事をするにしても、最初はホテルでの接客やサービスといった最前線の現場の仕事を経験することが非常に大事になってきます。
どんなスポーツでも、素晴らしいプレーをするためには基礎体力や基本練習が欠かせません。足場をしっかり固めたかどうかで、そこを土台にジャンプしたとき到達できる高さはまったく違ってきます。仕事も同じで、自分のキャリアの長期ビジョンを達成するには、まずベースをしっかり固めることが重要です。最初に最前線の現場を経験しているか否かは、将来のキャリアにおいてとても大きな差になります。
——ご自身の仕事を通じて、そうした差を感じることはありますか。
現場で培われた土台の有無は、見る人が見ればすぐに分かります。観光業界で活躍する方を大勢見てきましたが、ホテルやリゾート、旅館といった観光の最前線で顧客とじかに接しながら仕事をしてきた人は、皆「強い」です。分かりやすく言えば「自分の軸」ができているということ。軸がある人は、考え方や仕事への向き合い方がブレないので、時代やマーケットが変化しても、それに流されない判断や決断ができます。
——やはり何事も基礎づくりが大事なのですね。
これから始まる皆さんの仕事のキャリアは、この先もずっと長く続いていきます。
だからこそ目先のことだけでなく、自分のキャリア全体を長いスパンで見通した上で「最初に何をすべきか」「何で貢献できるか」という視点を持って仕事に臨んでほしいと思います。
>>星野佳路氏インタビュー(前編)を読む。