池上彰氏が就活生に指南「本当にやりがいのある会社の選び方」Photo by Masato Kato

*本稿は、現在発売中の紙媒体(雑誌)「息子・娘を入れたい会社2023」の「識者に聞く!『不確実性』時代を生き抜く知恵」を転載したものです。

日本社会を取り巻く状況は「不確実性」を増している。就活を始めるに当たって、不安を抱く学生や親は多いだろう。しかし歴史を振り返れば、いつの時代も不確実性に満ちており、環境がどれだけ変わっても真にやりがいのある会社を選ぶための指針は、変わらずに存在してきた。ジャーナリストの池上彰氏が、これから社会に出る若者たちに会社選びの要諦を上下2回に分けて教える。「歴史を学び未来を想像する力」の重要性とは。(取材・文/柳沢敬法 撮影/加藤昌人 ヘアメイク/市嶋あかね)

>>「池上彰氏インタビュー(上)」から続けて読む。

富士フイルム、東レ、AGCは
社名や事業内容を柔軟に転換してきた

――インタビュー(上)にて、不確実性の時代に発展性や将来性が見込める企業は、柔軟性があるところだと伺いました。そうした柔軟性はどうやって見極めればいいのでしょうか。

 たとえば写真フィルム製造では、日本の富士写真フイルム、米国のコダック、ドイツのアグファが世界三大メーカーとして知られてきました。しかしデジタルカメラが普及して写真フィルムが売れなくなり、アグファは倒産。コダックもかつての勢いはありません。

 そんな中、富士写真フイルムは、06年「富士フイルム」へと社名変更し、フィルム製造の技術を化粧品や医薬品の分野に生かすことで危機を乗り越えて、さらなる発展をしてきました。

 また、かつての東洋レーヨンは繊維産業の衰退に合わせて「東レ」に社名変更し、レーヨン生産から炭素繊維の製造などへシフトチェンジしました。旭硝子も「AGC」に社名変更し、ガラスだけでなく総合的に素材を扱う企業へと方向転換を図っています。

 あくまで1つの見方ですが、このように社名変更が行われていたり、事業内容を転換したりしてきた企業には「時代のニーズに沿って業態を変えることで発展しよう」という柔軟で前向きな経営姿勢があるといえるかもしれません。

 よって、就活の際はその企業の社史や沿革について調べてみるといいでしょう。そこからはその企業が時代と共にどう変わってきたか、世の中の変化にどう向き合ってきたかが見えてきます。それが企業の将来性や発展性を予測するヒントにもなるんです。