インターネット発の「web3」と呼ばれる潮流が、ビジネスや社会の構造を世界的規模で変革しつつある。働く価値観・スタイル、必要なスキルはどう変わるのか。web3が開く「共創社会」の到来を見通して枠組みを超えた知の創成を実践する伊藤穰一氏に聞いた。前編では、変化の概要を取り上げる。(取材・文/名須川竜太)
*本稿は、現在発売中の紙媒体(雑誌)「息子・娘を入れたい会社2023」の「識者に聞く!『不確実性』時代を生き抜く知恵」を転載したものです。「Web1.0」「Web2.0」との差別化などの観点から「web3」と表記しています。
新たな共創社会のモデル
「web3」は生活をどう変える?
インターネットでの動きを主とする新たな共創社会のモデルとして、web3(下の図参照)が注目を集めています。このムーブメントは、主にGAFA(※1)などの超巨大IT企業により、中央集権的な情報コントロールが進む社会の状況を変革していこうというものです。
最大の特徴は「分散(=非中央集権)」を志向している点で、対象は組織から社会・経済構造、文化まで広範にわたります。
さまざまなテクノロジーを活用し、多方面で「分散化(=非中央集権化)」への実践が進んでいるのも大きな特色でしょう。
例えば「ブロックチェーン」は、web3の代表的なデータ管理技術の一つです。中央集権的な管理者を介さず、ユーザー間で同一の金融取引記録、各種証明書、活動履歴などを共有し、相互監視することで、内容を改ざんされたくないデータの「管理台帳」として使用します。
一方で、現在、Z世代の若者を中心に文化的な変革が起こりつつあります。背景には、環境保護意識の高まりや中央集権への不信、「モノから経験へ」といったこの世代特有の価値観があります。
関心の対象や活動の場もモノからデジタルへとシフトしており、その潮流に、彼らの価値観を実現するテクノロジーがタイミング良く融合したのが今の状況です。
ともすれば、web3はテクノロジーの側面だけが語られがちです。しかし、私は、変革を求める若者たちとテクノロジーが組み合わさったことで、この新たな潮流が生まれたと感じています。