東北大学は入試を「総合型選抜」(旧AO入試)へ全面移行する方針を打ち出した。少子化が進む中、学力試験のない総合型選抜で入学者をかき集める大学が増加。東北大の方針に対し、世間からは「偏差値で届かない難関大学に入りやすくなる」との期待とともに「入学者の学力不足が進む」という懸念の声が聞こえてくる。しかし、そこには大きな誤解がある。特集『総予測2024』の本稿では、誤解の正体を明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)
「難関大学に入りやすくなる」
期待と懸念と大きな誤解
東北大学は入試を「総合型選抜」(旧AO入試)へ全面移行する方針を2023年、明らかにした。学力試験に特化した「一般選抜」からの脱却を打ち出したのである。
日本の大学入試は近年、自己推薦で受ける総合型選抜や高校からの推薦で受ける「学校推薦型選抜」(旧推薦入試)といった非一般選抜の入学者数が、一般選抜のそれを上回るようになった。この非一般選抜シフトは24年、ますます加速する。
東北大ではかねて、総合型選抜シフトが進んできた。24年度入試の募集人員構成において、非一般選抜比率(総合型選抜と学校推薦型選抜の比率)が約3割。旧帝国大学(北海道大学、東北大、東京大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学)の中では突出している(下図参照)。
旧帝大の一つである東北大が3割どころか10割へとかじを切ることに対し、世間からは「偏差値で届かない難関大学に入りやすくなる」との期待とともに「入学者の学力不足が進む」という懸念の声が聞こえてくる。
しかし、この解釈には大きな誤解がある。
学力試験のない総合型選抜で入学者をかき集める大学が増える中で生まれた、世間の誤解とは何なのか。次ページでは、誤解の正体を明らかにする。