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実際に立ち上げるネットスーパーアプリは小売事業者ごとの単独アプリ型、もしくは2500万ダウンロードを誇るレシピ動画サービス・クラシルのアプリへの組み込み型の2つから選択できる。プラットフォームのローンチ時期は2020年の秋頃を予定している。

「正直、新型コロナウイルスの影響で広告収益は5割ほど減りました。周りの人から在宅時間の増加で『コロナ禍で儲かってるんでしょ?』と言われるのですが、全然儲かっていません。目先の結果だけ見れば収益が減って大変ですが、僕らはコロナ禍で収益を失った以上に大きな収穫がありました。コロナ禍を機に会社全体で短期的な収益は捨てて、10年後のことを考える方針へと切り替えることができたんです」(堀江氏)

今回の大きな意思決定について、堀江氏はこのように語る。2016年にレシピ動画サービスをスタートさせてから利用者数、ダウンロード数を順調に伸ばし続け、国内で最も利用されるサービスへと成長を遂げたクラシル。なぜ、このタイミングで経営方針の転換に至ったのか。決断の裏側にある考えを堀江氏に聞いた。

「目先の収益」を意識しつづけると経営が難しくなる

「1年後、会社が生き残るために何をすべきか。数年前まではその考えのもと、あらゆる意思決定を行っていました」と、堀江氏は過去の経営方針について振り返る。

今から4年前。2016年にスタートしたクラシルは、競合ひしめくレシピ動画市場で勝ち抜くために多額の資金調達を行い、さまざまなグロース施策を展開してきた。その結果、約4年で2500万ダウンロードを記録するほどの規模になったわけだが、堀江氏は自社のビジネスモデルに違和感を持ち始めたという。

「今までのメディアのビジネスモデルは運営側が売り上げを伸ばしていくことと、ユーザー体験の向上が相関しないビジネスモデルなんです。言ってしまえば、広告の数を増やしてユーザビリティを悪化させれば収益は上げられます。短期的な視点で広告を増やして収益を上げ続けていれば経営は楽ですが、長期的な視点に立つと将来的に経営が難しくなってしまいますし、より便利なものが登場したときにイノベーションのジレンマに陥ってしまう。すぐ限界が来るのが見えます」

「それが今までのメディアのビジネスモデルです。ユーザー体験の悪化によって得られる売り上げはいま、この瞬間意思決定すれば上げることができます。一方、真のユーザーファーストな意思決定によって熱量が高いユーザーと僕たちが強く繋がることは、短期では結果が出にくく、不確実性が高く怖い未来への意思決定です。本当に必要とされる、最高のプロダクトを作る自信がないチーム以外はこの意思決定ができません」(堀江氏)