ネットスーパーの立ち上げ支援サービスに関しては、すでに10Xが開発不要でネットスーパーを立ち上げ可能なサービス「Stailer(ステイラー)」を展開している。ただ、堀江氏と大竹氏の2人とも「競合の意識はない」と強く強調する。

「大前提として小売事業者の課題、またユーザーの課題がすごく大きい業界なんです。世の中はすごい勢いで変わっているので負の部分を解決することに集中し、全力疾走していかなければ日本にネットスーパーが浸透していかないと思っています。だからこそ、競合だと思ったことはないですし、一緒に業界を盛り上げていければと思います」(大竹氏)

「例えば、ネットショップの立ち上げに関してもBASEとSTORESがあってよかったように、どこかの企業が独占する話でもないと思うんです。また1社が独占してしまい、そこにノウハウが溜まり、運営側が力を持った状態で業界が進んでいってしまうと、小売事業者が何も言えない状態になってしまいます。あまりにも広大なマーケットなので、いろんな事業者が出てきて、みんなで切磋琢磨していけたら、と思っています」(堀江氏)

淡々と沖で待ってればいずれ波が来る

delyは2014年の創業時、フードデリバリーサービスを展開していたが、思ったように需要が伸びず、2015年1月にサービスを撤退させている。しかし、今はどうだろうか。Uber Eats(ウーバーイーツ)や出前館といった、フードデリバリーサービスが当たり前のように使われる世の中になった。

「僕たちがそのままサービスを続けていたら上手くいったとは思いませんが、長く張り続けていたらできることがあるんだな、と。マーケット要因ではなく、未来は自分たちの手で創ることができるんだと確信を持てるようになりました」(堀江氏)

だからこそ、このタイミングでdelyは10年後の未来に向けて、リスクをとってでも大きな勝負を仕掛けていく決断を下した。

目先の売上は追わない──コロナ禍での方針転換、delyが仕掛ける「10年後への大勝負」
 

「この意思決定ができていなかったら、僕たちは多分5年、10年後まで苦しみながら毎年サービスのハックを続けて、ユーザビリティを悪化させて倒れていっていたかもしれません。誰も信じず遠い未来だけど、実は淡々と沖で待ってればいずれ波が来る。長い目線で事業を考えている人の方がハックしていないんです。だからこそ、僕たちも10年後に1番の会社を作るために、当たり前の経営に切り替えただけなんです」

「明日トラフィックが止まったら、どうしよう。そんな不安は毎日押し寄せてきますが、仮にトラフィックが止まってもクラシルのことを大好きでいてくれる人をいかに増やせるか。そのためにもネットスーパーが当たり前に使える世界を作っていかないといけないんです。スケールさせる話は会社でも一切していなくて、ユーザー数は無理に追わず、とにかく大好きなサービスになってもらうことしか考えていません」(堀江氏)