早速、次の例を見てみましょう。

 大手企業に勤めるAさんは、部下の仕事が遅いことに不満を感じています。「月曜までに提出するように」と言ったのに、部下は月曜日の定時前に資料を提出してきたと言うのです。「普通、月曜と言われたら、前の週の木曜くらいには私に見せるものでしょう」。

 たしかに、一理あります。でも、言葉通り受け止めると、Aさんは月曜を提出締切として明示していますし、部下はそれを守って、きちんと提出しているのですから、問題はないように思えます。

 このコミュニケーションをもう少し分解してみましょう。Aさんの発想はこうです。

月曜日には完成形の資料を提出したい

部下が一度で完璧な資料を提出することは難しいだろう

であれば、修正する時間も加味して、おおよそ前週の木曜くらいには資料を見せるべきだ

部下もそれくらいのことは分かっているだろう

部下には「月曜までに提出するように」と伝えよう

 結果として、部下にはAさんの“分かっているだろう”の部分が全く伝わっておらず、言われた通り、月曜日に資料を提出してきたというわけです。

 もしも最初の段階で、「月曜には完成形の資料を提出したい」、あるいは「修正の時間がかかることも加味して提出してほしい」といった適切な指示を出していれば、このようなミスコミュニケーションは発生しません。

 指示を出す上で私が重要だと考えているのは、ルールと定義の目線合わせをすること。具体的には、以下のステップで指示を出すことです。

ステップ1:「提出期限=完成期限」なのか、「提出期限=初回提出期限」なのかを明確にする

ステップ2:修正が必要な可能性があることを伝え、それを見越した提出期限を設定する

ステップ3:期限の設定は、「何日の何時まで」と明確に指定する

ステップ4:上記を踏まえ、部下にTODOリストをつくらせる

ステップ5:TODOリストに基づき、資料作成に必要な時間を予想させる

ステップ6:TODOリストと所要時間を、スケジュールに組み込ませる

 このプロセスを踏んだ指示出しを行うことで、上司と部下のミスコミュニケーションを格段に減らすことができます。上司の発する「月曜までに提出するように」には、本来、多くの要素が隠れていますが、それを部下に“察しろ”というのは無理があるのです。

 特に、経験の少ないZ世代の若者たちには曖昧な指示が大きな負担になり、やがてその負担が不満に変わっていきます。マネジメント側はそのことをよく理解し、的確で明解な指示を出すことを心がけましょう。