若いビジネスパーソン写真はイメージです Photo:PIXTA

クルマなどの「モノ」より、他者と交流するために必要な「コト」にお金を掛ける「Z世代」。デジタルツールを駆使して多様な人間関係を築くスキルや、つながり続けることで「SNS疲れ」に頭を悩ませる彼らの姿から、人生の先輩である中高年は何を学ぶべきだろうか。本稿は、林 裕之『データで読み解く世代論』(中央経済グループパブリッシング)の一部を抜粋・編集したものです。

きっかけひとつですぐにグループ発足
Z世代特有の「ぶどう型コミュニティ」

「若者の○○離れ」といわれる現象の中で、代表的なものは若者のクルマ離れだろう。しかし、さとり世代やZ世代については、「離れる」というよりは最初から寄りついてすらいないと解釈する方が正しいようだ。彼らの自動車にお金を掛けたい意識は若い時から低いままである。

 他方で、積極的にお金を掛けたいと考える費目として重要なのは「人とのつきあい・交際費」である。筆者が所属するNRI(野村総合研究所)では、過去25年にわたって同一設問・項目の「生活者1万人アンケート調査」を実施している。その2021年調査では、コロナ禍の影響を受け、Z世代より上の世代では「人とのつきあい・交際費」にお金を掛けたい意向は大きく減少したが、Z世代においては変わらず高水準を維持している。

 仲間とのつながりを重視する志向から、消費においても自動車などの「モノ」にお金を掛けるより、他者と交流するために必要な「コト」にお金を掛ける方を重視する。Z世代においては価値観の面でも消費の面でも「つながり志向」は依然としてマーケティングにおけるキーワードとなる。

 なお、NRI調査では団塊ジュニア世代は1971~1975年生まれを指し、ポスト団塊ジュニア世代は1976~1982年生まれ、さとり世代は1983~1994年生まれ、Z世代は1995~2003年生まれとしている。

図_積極的にお金を掛けたい費目出所/NRI「生活者1万人アンケート調査」(2000年、2003年、2006年、2009年、2012年、2015年、2018年、2021年版)。訪問留置法により一戸づつ訪問し、層化二段無作為抽出法で地域・性年代構成が日本人の縮図となるようにランダムに抽出された対象者に回答を依頼している。 拡大画像表示

 Z世代ではスマートフォンの活用、特にSNSによって多様な人間関係を築く傾向にある。NRIの調査中、週1回以上つきあいのある人について尋ねた項目にて、「学生時代や子どものころに知り合った友人」と回答した割合はポスト団塊ジュニア世代の49%や、さとり世代の60%よりも高く77%に達し、また「インターネットなどを通じて知り合った友人」が2割程度まで存在する。

 その人間関係は、高校・大学の友達であったり、同窓会や成人式があればそれがきっかけですぐに小学校・中学校のSNSグループができてしまう。