iPhoneの「次」が見えないアップル

 23年のマグニフィセント・セブンの株価の勢いには、目を見張るものがあった。背景には、各社への成長期待の高まりがあった。米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締め継続にもかかわらず、米国の経済が好調さを維持したことも追い風となった。コロナ禍対策としての現金給付などによって一時的に家計が過剰な貯蓄を抱えたことも大きかった。

 ただ、7銘柄の中で、アップルの上値は相対的に重かった。要因の一つとして、iPhone、Mac、iPadの需要に大きな伸びが期待できないことがある。23年7~9月期まで、4四半期連続で売上高は減少していた。

 そうした中、ヘルスケア分野の収益拡充を目指していたApple Watchが、特許紛争の影響から一時、販売停止となった。これもあり、「ヒット商品による成長の継続は難しくなった」と、アップルの中長期戦略を慎重に考える主要投資家は増えた。

 需要の飽和状態から脱却するためには、企業自ら新しいモノを生み出すことが必要だ。新しい製品のヒットは、付随するサービスの需要を生み出す。これまでアップルはそうした取り組みを強化して業績を立て直し、高い成長を実現してきた。

 1997年に故スティーブ・ジョブズがアップルの経営トップに復帰すると、iMac、iPodなど革新的な製品を生み出した。それに伴い、ネットで音楽を入手する、ネットに情報を保存するといった新しいサービス関連の需要も増えた。

 しかし、そうしたビジネスモデルを常にアップデートしていくのは、たやすいことではない。むしろ近年のアップルは、ハードの販売減少を、サブスクリプションなどのサービスで補う収益構造が、期を重ねるごとに強まっている。

 新製品を発表することで、既存の商品が「時代遅れだ」との認識を人々に与えるマーケティングの戦略を「計画的陳腐化」というが、アップルがこの戦略で高収益を獲得することは難しくなりつつある。一例として、iPhone15 Proは、発表直後から「価格が高いわりに新しい機能が見いだしづらい」との指摘が多い。

 世界全体でスマホの需要は飽和し、価格競争も激化している。新興国で低価格の“中華スマホ”の売れ行きが伸びたことも、アップルには逆風だ。