AIへの取り組みでグーグルやサムスンに出遅れ
AIの開発や利用においても、アップルは他のIT先端企業に遅れている。22年11月末、オープンAIがChatGPTをローンチすると、すぐにユーザー数は1億人を超えた。その後も、大方の経済専門家の予想を上回るペースでAIの利用は急増している。
AIは、これまでのビジネスのあり方を根本から変える力を秘めている。情報の検索を進めると同時に文書を作成する、新薬開発のスピードを高めるなど、企業の事業戦略に与えるインパクトは甚大だ。半導体分野でも、AIの学習能力向上に決定的影響を与えるGPU(画像処理半導体)の重要性が急上昇している。
ChatGPTの他にも、グーグルのGemini、アマゾン・ウェブ・サービスのAmazon Bedrockなど、AI関連のサービスは勢いづいている。SNS分野でTikTokなどとの競争が激化したメタは、「AIを全てのサービスに組み込む」と宣言し、自らビジネスモデルを組み替える決意を表明した。
そうした環境の変化で、AI利用のインターフェース(AIデバイス)として、スマホの機能が向上することへの期待も高まった。それは、世界のユーザーからの要請でもある。
23年10月、グーグルは機械学習への対応力を向上させた最新チップを搭載したスマホPixel8を発表した。続く11月、サムスン電子は英国知的財産庁(IPO)と欧州連合知的財産庁(EUIPO)に「AI Phone」「AI Smartphone」の商標を登録した。同社スマホの旗艦モデルであるGalaxyS24にAIを搭載し、リアルタイムでの通話通訳などを提供する方針だ。
アップルが自社で開発したAIをiPhone、あるいは新製品に搭載するとの期待も高まっている。しかし、23年6月のゴーグル型端末Apple Vision Pro、続く9月のiPhone15の発表時、アップルはそこまで踏み込めなかった。これを受けて主要投資家の多くは、同社の先行きをより慎重に考えるようになった。