「Tポイントのおかげ」で、すかいらーくの人気メニュー復活!?流通業界にマーケ革命が起きた理由Photo:Yuichiro Chino/gettyimages

カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は2003年10月に日本初となる共通ポイント、Tポイントを立ち上げた。実は、そのTポイントは当時の流通のマーケティングの常識を根底から覆すことになる。長期連載『共通ポイント20年戦争』の#12では、Tポイントがマーケティングに革命をもたらすことができた理由を解説する。また、ローソンやすかいらーくといった加盟店で生まれた画期的なマーケ手法や、その効果についても明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)

交渉は難航もTポイントに存在感
新たなマーケ手法が加盟店に恩恵

「加盟店になりそうなところを紹介しますよ」。2004年夏、Tポイントの加盟店開拓に奮闘していたカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)副社長の笠原和彦に、ローソン社長だった新浪剛史がそう持ち掛けた。新浪が挙げたのが、宅配ピザチェーンのピザハットである。

 ピザハットは1992年に、日本ケンタッキー・フライド・チキン(現日本KFCホールディングス)が米ピザハットとFC契約を結んで立ち上げられた。日本ケンタッキー・フライド・チキンの当時の親会社が三菱商事だった。要するに、新浪の出身である三菱商事のつながりである。

 強力な“コネ”に加え、POS(販売時点情報管理)システムを未導入のピザハットにはTポイントのシステムを入れやすい利点もあった。加盟交渉は極めてスムーズに進み、ピザハットは05年5月にTポイントの取り扱いをスタートする。

 ただし、ピザハットのようなケースは極めてまれだった。Tポイントの加盟交渉は数年に及ぶものや、長い交渉の末に導入見送りとなる例も少なくなかったのだ(『Tポイント、マツキヨと無印良品が導入見送りの窮地に「救世主」となった加盟企業とは?』参照)。下表からは、悪戦苦闘が続いたことがうかがえる。

 一方で、Tポイントは着実に浸透していた。例えば、ローソンでは、スタートから2年ほどで、CCCが展開するレンタルビデオチェーン・TSUTAYA会員の2割に当たる360万人が店頭でTポイントカードを提示するまでになった。

 CCCが05年に実施した、利用者を対象にした調査からも、Tポイントの効果が垣間見える。ローソンを利用した理由を尋ねたところ、「Tポイントがためられる」との回答が4割に上ったのだ。これは調査の1年前に比べ2倍の水準である。

 また、Tポイントがなければ、ローソンを訪れる機会が減ると答えた人が回答者全体の3割強を占めた。開始から3年ほどでTポイントの存在感はかなり高まったのだ。

 加盟店にとってTポイントに第一に期待していたのは、そうした集客効果だったのは間違いない。ただし、大きな恩恵がほかにあった。それが、マーケティングの進化である。

 実は、Tポイントは従来の流通業界のマーケティングに革命を起こした。なぜか。加盟店で生まれた画期的なマーケティング手法の中身や、その効果について、ローソンやすかいらーくの事例を基に明らかにしていこう。