Tポイント、開始初日の利用者は「たった300人」!?“生みの親”も絶句したスロースタートPhoto: Diamond

2003年10月、ビデオレンタルチェーンを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は、Tポイントをスタートさせる。だが、初日の利用者数はわずか300人超にとどまるなど日本初の共通ポイントは低空飛行がしばらく続くことになる。長期連載『共通ポイント20年戦争』の#9では、Tポイントという名称の由来に加え、「生みの親」も絶句したスロースタートの様子について明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)

「Tポイント『T』は直感的に決めた」
TSUTAYAの加盟店の反発を避けた?

 ビデオレンタルチェーンのTSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)のポイント共通化プロジェクトは2003年秋の開始に向け急ピッチで進んでいた。

 ポイント加盟店の開拓では、ローソンと新日本石油(現ENEOSホールディングス)の参加を取り付けたほか、システムもNECの全面協力で開発を急いでいた。

 CCC社内では、ビジネスの根幹となる加盟店開拓やシステム開発と並び、共通ポイントの名称も議論された。新しいブランドを立ち上げる際に、名称は極めて重要である。

「デザインは『T』がきれいなので、直感(で決めた)」。CCC社長の増田宗昭は後日、メディアのインタビューなどに、Tポイントの名称の由来をそう語っている。Tポイントの「T」の由来はTSUTAYAではないとの立場である。

 実は、当時、TSUTAYAの加盟店の中には、屋号をTSUTAYAに変えることに抵抗感を持っていた企業があった。「自分たちの屋号の方が客に浸透している」と主張する加盟店オーナーもいたほどだ。そうしたオーナーらに「『T』はTSUTAYAの頭文字です」とは言えない。

 Tポイントの「生みの親」でCCC副社長の笠原和彦は、Tを採用することに異存はなかった。ただし、こう主張した。「Tomorrow、Together、Top Share Allianceの『T』ということでいいんじゃないか」。

 三つ目に関して言えば、笠原が考案したポイント構想の柱は、各業界の最大手を囲い込む「ナンバーワン・アライアンス」。まさに、その構想を体現した説明だったわけだ。だが、笠原の提案は退けられた。

 名称の意味付けこそ曖昧になったものの、Tポイントというブランド名は思いの外、すんなりと決まった。Tポイントという名前は呼びやすく、覚えやすかった。

 青地に黄色のTの文字が入った視認性が高いロゴのデザインも強みだった。デザインしたのは、ユニクロなどの企業ロゴを手掛けた著名クリエイティブディレクターの佐藤可士和である。

 実は、佐藤がデザインしたロゴは、そもそもTポイントではなく、旗艦店である六本木TSUTAYAに使うためだった。それを新たに立ち上げたTポイントのデザインに転用したのだ。

 現在のCCCの公式見解によると、Tの意味は「Top Share Alliance」とされる。だが、そもそもTの文字が有力候補として上がったのは、やはりTSUTAYAと無関係だったとはいえないだろう。

 いずれにしろ、Tポイントという名称は共通ポイントが世の中に定着する上で、大きな役割を果たしたことは間違いない。

 Tポイントがスタートした03年10月に話を戻そう。

 日本初となるポイントビジネスのスタートを控え、CCC社内では高揚感が高まっていた。その一方で、うまくいくかどうかの緊張を人一倍感じていたのが、共通ポイントの発案者である笠原だった。