街には「週刊誌嫌い」の人が溢れています。案の定、ネット上にはこの編集長コメントに厳しい声が寄せられました。

「週刊誌って何ですかね。文春砲と言われているけれど、芸能人の粗探しでしょ」「結局、今回のことに限らず、嘘でも真実でも一度文春砲喰らったら、その人の今後の人生まで変えてしまう」――。

 編集長は大変です。完売したら部下の鼓舞もしなければなりません。ただ、よかれと思って出したのであろうこの編集長コメントが、全く別の角度の批評を誘発してしまったことは否めません。

元編集長だから知っている
「完売」の意外な真実

 この完売報告に関して世間で盛り上がった議論が、「週刊誌は有名人のスキャンダルを書いて儲けている。それに比べて損害賠償額が少なすぎる。書かれた側から名誉毀損で訴えられて敗訴しても、賠償額より儲けた金額の方が多いから、『書き得』ではないか」というものです。

 中には、500円弱の掲載号が約45万部売れたことに言及し、「単純計算で2億円以上の売り上げに対して、賠償額が数百万円というのは少なすぎる」という旨を解説していた元知事もいました。ただ、雑誌の売り上げ金額と賠償額という純粋な出費を比較するのは、乱暴すぎる議論です。

 私の経験則では、雑誌が完売しても、利益は概算でおそらく4000万円に満たないと推察します。完売というのはあくまで「業界用語」です。実際は100%売れたということではなく、流通過程で売り物にならない雑誌が一定割合発生するので、最高でも85~90%です。そして、返本も考慮しなければなりません。私が在籍していた時代の文春社内の詳しい懐事情を紹介するのは控えますが、実際には4000万円を下回るでしょう。しかもこの数字には、編集部以外で雑誌に関わる広告、営業、宣伝、経理などのスタッフの人件費・経費は含まれていません。それらを差し引いた実際の利益は、2000万円というところでしょうか。