移民が増えることで、先進国、特に欧米で、文化的衝突とナショナリズム問題が起きています。アメリカではトランプ氏が大統領時代に、「メキシコとの国境に壁を作る」と公約しましたが、移民が増えすぎて白人の仕事が減るのではないかと考えていた人々の支持を集めました。ヨーロッパでは、稼ぐつもりでやってきた移民が想像よりも厳しい生活を強いられて不満を募らせて、テロなどの事件を起こしています。

 より高い所得を得ようとして、新興国の人々は海外や大都市に移動しようとします。それでも多くの国で所得格差の問題は残り、一握りの富裕層が大きな富を得ることは続くと考えられています。

 新興国では、旧来の支配勢力として利権を握っていた人々や、海外からの投資を受けて初期の頃に成功した人々がさらに経済的に成功して富裕化していくことで、格差が拡大しているという懸念があります。先進国では、特にアメリカで顕著ですが、起業して大成功した億万長者たちがさらに経済的に成功して、何兆円もの資産を有するようになっています。

非正規労働者の増加によって
日本の格差は広がったのか?

 日本でも格差問題という言葉がよく使われています。日本では1991年のバブル崩壊以降、新卒社員の採用数が減ってしまい、正社員になれなかった人々が派遣社員として働くようになりました。正社員の数を減らした企業では、業務がこなしきれないことが起きますが、正社員を雇うよりは低コストで済むので、派遣社員を使うのです。もともと派遣社員というのは短期的な労働力不足を補う手段だったのですが、低コストで済むというメリットがあるために、新卒採用をさらに減らし続け、恒常的に派遣社員に業務を行わせるという企業も多くなりました。

 それが2008年のリーマン・ショックと呼ばれる世界的経済危機の時に、業績が悪化し、業務量自体も減ってしまったために、派遣社員の雇用を止めるということが多発しました。これが「派遣切り」と呼ばれた現象です。この頃から格差問題という言葉が頻繁に使われるようになりました。