「大宏池会」が復活し
「上川首相」を担いで院政を敷く?
それでも、自民党総裁選には石破茂元幹事長、高市早苗経済安全保障担当相、野田聖子元総務相らが出馬を検討するはずだ。とはいえ、先述の通り岸田首相に権力・権限が集中し、表向きは派閥がなくなった今、立候補に必要な「20人の推薦人」を集めるのは大物政治家といえども至難の業ではないだろうか。
一方で、上記の候補者に女性が2人含まれているように、岸田体制の閉塞(へいそく)感を打破する唯一の方法として「日本初の女性首相」の就任が期待されているのも確かだ。
この点について、実は高市氏・野田氏の対抗馬として、岸田派に所属していた上川陽子外相が急浮上している。
上川外相を巡っては、麻生太郎副総裁が今年1月に「おばさん」「そんなに美しい方ではない」などと発言して批判を呼んだ。だが実は、上川外相の功績を「高評価」する文脈の中での発言であり、その実力を買っているのは確かだ。岸田氏が首相の座を降り、麻生氏と共に上川外相を次期首相候補として担ぐ可能性もゼロではない。
岸田氏・麻生氏が手を組むとなると、先述した「大宏池会」の復活が現実味を帯びる。総裁選で対立候補を推した議員は、両名の権力・権限を通じて徹底的に干されるかもしれない。
また、上川内閣が誕生した暁には、上川氏が首相として「政策立案」を手掛ける裏で、政局を左右する意思決定は「キングメーカー」である岸田氏・麻生氏が掌握するケースも考えられる。いわば「院政」を敷くわけだ。これが、「低支持率首相による独裁体制」によって今後起こり得る最悪の事態である。
岸田首相はかつて18年の総裁選に出馬せず、故・安倍晋三元首相からの「首相禅譲」に望みを託したことがある。だが、目論見(もくろみ)通りに禅譲は起きず、安倍元首相が3選を果たした。20年の総裁選には出馬したものの、菅義偉前首相に惨敗した。21年の総裁選においても、1回目の投票ではどの候補者も過半数に届かず、決選投票によって首相の座をつかんだ。
そうした経緯に鑑みても、岸田首相は圧倒的なカリスマ性を持っているわけではなく、どこか頼りない印象だ。だからこそ、派閥解体によって「棚ぼた的」に強めた権力を、簡単には手放さないとみられる。この動きが加速し、岸田首相が本当に「独裁化」しないよう、国民は注視していくべきである。