当事者意識がない集団は、
危機を乗り越えられない
明治維新後、四民平等の社会になったにも関わらず、多くの日本人からは旧来の身分制度による卑屈さのままでした。
庶民の精神状態を知った福沢諭吉は、日本国民こそが国家の主人公である新時代に、当事者意識をあまりに持たない人たちを叱咤激励する意味も込めて『学問のすすめ』を執筆したのでしょう。
当事者意識がないことで現実の壁に衝突してしまうことは、単に個人の問題だけではなく、企業などの集団あるいは国家としての日本でも同様です。
『学問のすすめ』では、織田信長に敗れた今川義元の軍勢が、大将の首を取られた途端に蜘蛛の子のように四散してしまい、あっけなく滅亡した一方で、フランスが普仏戦争でナポレオン3世を人質に取られたのに、さらに勇猛果敢に戦って国家を保ったことが書かれています。
当事者意識を持たないことで、現実に直面している問題が消え去るわけではありません。むしろ何の備えもないままに変化が進行してしまい、気がつく頃には大失敗が確定していることさえあるでしょう。
社会の変化、ビジネスの変化、海外情勢の変化、個人生活の変化。すべて私たちは当事者のはずです。そして、正しい当事者意識を持つことは、問題解決のための最初の一歩であり、新たに適切な学習を始める重要なきっかけとなることも『学問のすすめ』から学べる点なのです。