(3)日本人に多い「怨望」を避けよ。
他人の足を引っ張る愚かさ

『学問のすすめ』で諭吉は、怨望こそもっとも社会に害毒を流すものだとしています。では、「怨望」とは一体なんなのでしょうか?

「怨望」とは、例えば他人の幸福と自分の不幸を比較して、相手が良く自分に不足があれば、自分を改善するという手段を取らず、逆に他人を不幸に陥れて他人を自分と同じ状態にしようとすることです。このような者の不平を満足させるならば、世間一般の幸福が減るだけであり、何の得にもなりません。

【怨望から生まれる行動事例】
・働き方が陰険、自分から積極的に何かを成すことがない
・他人の様子を見て自分に不平を抱き、自己反省ではなく人に多くを求める
・不平を解消して満足する方法は、自己の向上ではなく他人に害を与えること

 このような社会に損失を与え、幸福を減らすだけの「怨望」が実は日本社会には溢れていると諭吉は指摘しています。「怨望」を元に私たちが行動すれば、優れた人や存在に出会うたびに、ひたすら他人の足を引っ張り、自分と同じ低いレベルまで陥れることで満足を得ることになります。これは極めて醜悪で、非生産的です。

 では「怨望」の逆を実行すればどうでしょうか。自分より優れた人、幸福な人に出会ったら自分に欠けている部分をまず補い、自らを向上させることで、優れた人と同じ高さに少しでも近づく努力をする。相手が自分より幸せであれば、相手の足を引っ張ることなく、自分もより幸せになれる努力をする。

「怨望」から生まれた思考や行動には学びがなく、社会全体への貢献も皆無です。一方で「怨望」とは逆の人生態度は、優れた誰か何かに出会うたびに、あなたの中に健全な学びと成長の意欲を生み出すことになります。 世間に流布する「怨望」を捨て、逆の行動指針を持つことで、人に出会うたびにあなたは成長する学びを行うことが可能になるのです。(第4回に続く)※4/8掲載予定


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