日本的組織の悪しき特性を知り
失敗に巻き込まれない
2冊目にお薦めするのは『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』(中公文庫)です。日本はやっと最近バブル期の日経平均株価を上回るなど、回復の兆しが見えてきましたが、「失われた30年」と呼ばれる長い低迷に陥っていました。
この低迷の理由はいくつもありますが、1つには日本人の集団としての欠点が露呈したといえるのではないでしょうか。特に状況が悪化したとき、集団として適切な行動が取れていないように思います。これは第2次世界大戦の敗戦理由ともつながる話で、それに気づかせてくれるのがこの『失敗の本質』です。1980年代に書かれた本書では、ビジネスとの共通性も取り上げています。
本書で指摘される日本の失敗の1つは、環境に過度に適応しすぎること。過去の成功体験に縛られて、環境が変わっても変化を起こせない点です。2つ目が、硬直した官僚的な組織構造と属人的な人間関係。よりシステマティックで合理的な判断による組織づくりと行動ができない点です。3つ目が「アンラーニング」の欠如です。状況の変化に応じて、現状に合わない価値観や知識はいったん捨てて、学び直すことで自ら変革し続けることは、現代の組織にも必要なことです。
残念ながら、現代でも同じような失敗を抱える企業・組織は多いです。これから社会に出る・出たばかりの新社会人に暗い話をしたくはありませんが、これからの人にこそ、“失敗”組織に巻き込まれず、「おかしい」と思う違和感を大事にして組織を変えてほしい。そのためにも、こうした日本的組織の悪しき特性を理解しておいてほしいと思います。