将軍とは強烈なもの
王ならば「度量」を持て

 もう一つわかりやすい例を述べましょう。

 筆者の会社で以前、事業自体は物凄く成長しているのに、舵取りしている事業マネージャーが強烈すぎて、組織内に不満がくすぶっていることがありました。

「ついていけません」「大変すぎます」と現場から声が上がってくるようなマズい状況。どうしようかと悩んでいた私に、メンターの一人が教えてくれました。

「そんなものだ。将軍は強烈なのだ。将軍の役割は現場に出て戦果を上げることだ。たとえば『キングダム』の将軍を見てみろ。みんな物凄く強烈で、手に負えない感があるだろう。でも、彼らはプライドを持って結果を出してくる。最終的には結果が全て。そこに至るプロセスは、バランスを見ながらもある程度は呑み込む度量が、王には必要であろう」

 なるほど、自分の感想としても、『キングダム』の将軍・王騎などはまだ話の通じるほうで、王翦、桓騎、麃公(ひょうこう)等々、隙を見せたらいつ寝首をかかれてもおかしくない将軍ばかりという印象です(笑)。

 そうした絶対的な将軍はプライドも高く、与えられた持ち場で使命を果たすことに心血を注ぎます。その過程でいかなる困難に阻まれても、任せて見守れば戦果を上げてくれる。それをうまくコントロールするのが「王」である自分の役割だ、と納得できました。

 かくして、先述の事業マネージャーは見事に最大の結果を出し、社内での信頼を集め、最高の組織を作り上げました。繰り返しますが、私自身は現場でリーダーシップを発揮していません。

書影『武器としての漫画思考』『武器としての漫画思考』(PHP研究所)
保手濱彰人 著

 他にも、『キングダム』から得られる戦略的思考として、

●右腕と左腕のどちらを取るか

●王は、心が強くあらねばならない

●最強の官僚組織を作る重要性

 など、まだまだ語り尽くせない内容がありますが、それはまた別の機会に。

 ビジネスリーダーの指南書としての『キングダム』、これを機にぜひ読み返してみてはいかがでしょうか。